ターン64 蹂躙王と鉄砲水
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ふと気が付くと、固い地面の上に寝かされていた。体の上には毛布が掛けられ、すぐ横からは暖かな熱気と共に焚火のパチパチという音が聞こえてくる。
少し体を動かそうとするも、まだうまく手足が動かない。川に飛び込んだせいでずぶぬれの全身はまだ乾ききっておらず、湿った制服が余計に動きを邪魔する。それでもどうにかしようと唸っていると、枕元から聞き覚えのある声がした。
「よ。起きたか、久しぶりだな」
「その……声……」
「ああ、動くな動くな。火が近いぞ馬鹿」
静止の声も耳に入らず、軋む体を無理やり持ち上げる。どうにか上体だけ起こし、その辺で拾ったらしい木の枝で焚火をかき回す彼と目が合った。
「……ユーノ」
「おう。ほんっと久しぶりだな」
何か言おうと思ったけど、疲労が溜まっている体にとって焚火の誘惑はあまりにも強すぎた。次第に重くなる体を支えきれず、地面にずるずるとへたり込む。重いまぶたを支えきれなくなった時、再び意識が闇に沈んだ。
「ふー……」
清明が再び眠り込んだのを確認し、深くゆっくりとため息をつくユーノ。今の短い会話だけで無意識のうちにかいていた冷たい汗をぬぐい、近くの岩にもたれかかる。
「なんなんだよ今の……こいつ、こんなプレッシャー強い奴だったか?」
遊野清明。最後にユーノが見た時には、ダークシグナーとなったことにより常人を越える力こそ持っていたものの、そんなものを感じさせない良くも悪くもただの少年でしかなかったはずだ。
だが、今の彼はあの時と外見こそ同じではあるが、その中身はまるで違う。全身を包む悲哀や狂気寸前の危うさの作り出す雰囲気はその年にはまるで似合わない独特の威圧感をもたらし、目の光にもどこか影が入りじっと見ているとその中に吸い込まれて消えてしまいそうな錯覚を催す。もはやそれは、少し見ただけでまともな人間ならば本能的に危険を察知するほどの存在になっていた。
そしてポツリと吐き出した、一見、誰に言うでもない独り言にしか聞こえないその言葉。しかしそれに反応するかの如く、地面に落ちた彼の影が揺らめき形を変える。人の形から伸びる、人ならざる影。そのシルエットはまるで、1匹のシャチが丸まっているようにも見える。そしてどこからともなく響く、第三者の声。
『ああ。私達のいないうちに、また面倒事に巻き込まれたようだな。それも、特別厄介なものに』
「待てやコラ、何他人事みたいなこと言ってんだ。だいたい、なんでお前らがコイツと離れてたんだよ」
突然の声にも驚く様子を見せず、むしろムッとした様子で言葉を返すユーノ。どうやらあまり聞かれたくないところを疲れたらしく、答える声の調子がやや弱くなる。
『それは説明しただろう……ここに飛ばされるときに引き離され
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