巻ノ七十三 離れる人心その三
[8]前話 [2]次話
「これまでの幕府の様に整ってはおらぬ」
「鎌倉や室町にあった」
「あの様な、ですか」
「幕府の様な仕組みが整っていない」
「それが為に」
「これではお拾様が幼いままだと」
それこそというのだ。
「天下は治められぬ」
「ですか、どうしても」
「では太閤様の後は」
「内府殿ですか」
「そうなりますか」
「そうなるやもな」
こう言うのだった。
「やはりな」
「ですか、では」
「天下は一つになりましたが」
「その天下が完全に確かになるには」
「泰平が確かになるには」
「唐入りの力をそちらに使えばよかったが」
つまり腰を落ち着けて政に向かえばというのだ。
「よかったが」
「それが、ですな」
「戦をした為に」
「そちらに力を多く使ってしまい」
「政には」
「そして関白様もな」
秀次、彼もというのだ。
「だからな」
「太閤様がおられればいいですが」
「太閤様がおられなくなると」
「最早」
「次の天下人で」
「豊臣家からは」
「せめてじゃ」
幸村は袖の中で腕を組み瞑目する様にして言った。
「織田家位にな」
「一門の方がおられ」
「跡継ぎの方もおられれば」
「この様な状況にはですか」
「なりませんでしたか」
「太閤様とお拾様だけでは」
とてもというのだ。
「心もとない」
「そういえば徳川家はです」
筧が言った、ここで。
「内府殿は子沢山で」
「そうじゃな、ご子息が多くおられる」
望月も筧のその言葉に頷く。
「何故か姫君は少ないが」
「ご子息は多く父親違いとはいえ弟君達もおられる」
海野はこのことも指摘した。
「一門衆もおられる」
「特にご子息が多い」
このこをだ、根津も言った。
「これは強いか」
「家中は一門衆もまとまっている」
由利は考える顔で言った。
「これも大きいのう」
「ご嫡男は竹千代殿か」
穴山はこの者の名前を出した。
「三男であられるな」
「ご嫡男はご長子であられたが」
清海は既にこの世を去った信康のことを言った、信長に言われて家康が仕方なく腹を切らせた我が子である。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ