巻ノ七十三 離れる人心その二
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「親族もな」
「必要ですな」
「我等真田家もそうですし」
「お家騒動も起こりますが」
「それ以上に跡を継げる方がおられ」
「後見人や重臣にもなりますし」
「ご一門は必要ですな」
十勇士達もこう言う、このことについては。
「お家のことを考えますと」
「どうしても」
「そうじゃ、しかし豊臣家はな」
この家は最早というのだ。
「太閤様とお拾様しかおられぬ」
「これでは」
「かなり危ういですな」
「このことは否定出来ませぬな」
「若しお拾様に何かあれば」
「ご幼少のあの方に」
「これでは頼りない」
あまりにもというのだ。
「豊臣家の天下はな」
「では」
「若し太閤様に何かあれば」
「その時は」
「豊臣家は」
「それでじゃ」
拾一人になってしまうと、というのだ。
「豊臣家では天下は危ういとなりな」
「天下人は、ですか」
「別の方になられるかも知れぬ」
「そうなるやもですか」
「その場合はな」
幸村は先の先まで見ていた、それを広く出来る彼の識見がそうさせている。そのうえで
の言葉だった。
「おそらくじゃが」
「まさか」
「その場合の天下人は」
「若しや」
「やはりあの方じゃ」
袖の中で腕を組み言った。
「内府殿じゃ」
「そうなりますか」
「あの方は二百五十万石、天下一の大身です」
「しかも多くの民に慕われていて」
「政も戦もお見事です」
「徳も備えておられます」
「だからじゃ」
家康ならばというのだ。
「天下人はな」
「あの方ですか」
「あの方となりますか」
「太閤様に何かあれば」
「お拾様が幼いまでに」
「正直太閤様はじゃ」
秀吉、彼はという。
「最早な」
「お歳ですか」
「天下統一から言われていますが」
「やはりですな」
「もう還暦間近で」
「それでは」
「しかもお身体も弱ってきておられるという」
言うまでもなく歳によってだ、秀吉のこの老いは明らかでこのことも懸念されていることであるのだ。それも数年来。
「ではな」
「長くはないですか」
「いよいよ」
「そう思っていいですな」
「しかも天下は足場がな」
その基盤がというのだ。
「まだ固まっておらぬ」
「その力を唐入りに使っていて」
「それで、ですな」
「検知と刀狩りはしましたが」
「それでも」
「天下を治める確かな仕組みがじゃ」
それがというのだ。
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