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俺の四畳半が最近安らげない件
何処かへ続く扉
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だ。扉を壊しては、再生される。壊した後、泊まり込んで見張ったこともあった。だが少し目を離した隙に再生される。壁を丸ごとくり抜いても、壁ごと再生された。コンクリで埋めても駄目だ。コンクリの上に扉が浮き上がる」


―――なにそれ怖い。


「そ、そんな超常現象を店子に告知なしとか…」
「広告に書いたわ。ばっちりしっかり」
柏崎のツッコミを予知していたかのように、大家は店子募集広告を広げて見せた。
「部屋の奥に扉…あります」
勝ち誇ったように、厳かに呟く。…なんか腹立つなこいつ。
「こ、こんな表示、普通スルーするだろう!?あ、扉ねハイハイくらいにしか思わねぇよ!!」
「こちらとしても悩みに悩んだのだ。この不可解な瑕疵をどうすれば正確に伝えられるかと」
瑕疵っつったか今。
「……百歩譲って変な扉のことはいい」
「えっ、いいのかこれ!?」
いや、本音を云えばよくはねぇが。
「あの、偶に扉から覗いてすぐ居なくなる、あいつらは一体何なんだ」
ローブの大家は突如瞑目し始め…俺たちがイライラし始めたあたりで徐に目を開いた。
「これはあくまで、推測なのだが」
居住まいを正し、大家は語り始めた。
「君らも例えば、2徹とかしてものすごい疲れている時にその辺の扉を開けると、ありえない物が見えることはないか」
「……ありえない物」
「妙にでかいカマドウマとか、宇宙船のコックピットとか、南の島のビーチとか」


―――見知らぬ二人組の男、とか。


「彼らにとって、扉の向こうのこの世界は『ものすごい疲れている時の幻』なのではないか。だから一旦、扉を閉じる。そして恐らく彼らは扉をもう一度開ける。その時には元通りの『扉の向こう』に戻っている」
「……えぇ……」
そんなポジション聞いたことないんだが。なんだ幻覚ポジションて。
「つまりここに住まう限り、疲労のピークに達している連中に虚ろな目を向けられ続けるのか」
「棚で塞いでおけば問題ない。どうやらあの扉は外開きだし、基本的にノックはされないから、たまに棚の裏からドアが開く音が聞こえるくらいだ」
「そんな簡単に云うけどな!」
「安かろう?」
「ぐっ…」
「築浅、駅近、風呂トイレ完備。地下ということを差っ引いても安かろう。強いていえばドアが開く音くらいだが、世の中には線路沿いに建つアパートもある。そんな騒音に比べたら」
「いやいやいや定期的に不審者が覗くんだぞ」
「新品家具、据え置き。更新料、通常の半額」
「ぐぐ…」


―――大家の繰り出す好条件ラッシュに畳みかけられ、俺は結局ここに住むことになった。
棚で塞いだ扉が開く頻度は、大体15回くらい。慣れたらさほど気にならなくなった。凄い暇な日などは、棚をどかして来訪者を待つこともある。


ただ…いつだ
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