暁 〜小説投稿サイト〜
俺の四畳半が最近安らげない件
何処かへ続く扉
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ノブを回してみたりしたが、やはり扉はびくともしない。まるでそう、コンクリの壁に埋め込まれたドアノブをむなしく引っ張るように。
「―――おい、ドリルを貸せ」
汗だくになるまでドアノブを引いた柏崎が、ぼそりと呟いた。
「いや一般家庭にドリルはねぇよ」
「それに準ずるものは!!なんでもいいから!!」
「錐なら…」
一応、錐を渡してみたが、これで何しろってんだ馬鹿野郎と叫ばれて叩き落とされた。…まぁ、錐でどうにかしろと云われてもねぇ…。
「まぁ待て、それは最終手段だ。…それより外に出てみよう。あのドアの向こうあたりの地表はどうなっているのか気にならないか」
「幹線道路だよ!!強いて云えばバス停があるよ!!」
「……だよなぁ……」
「ドリル買ってくる」
「お前なんでそんなムキになるの!?」


俺たちが軽く揉め始めたその時、再びドアノブがガチャガチャと回り始めた。


「柿崎ィ―――!!!」
薄茶色い軍服の男が、ボロボロのゲートルを引きずって怒鳴り込んで来た。軽く立ち上がりかけた態勢のまま固まる俺たちをギラギラした目で睨め回すと、男は小さく舌打ちして勢いよくドアを閉めた。
「………なにあいつ!?」
「軍人来たぞ軍人!!日露戦争真っ最中みたいな奴来たぞ!!」
「柿崎探しに来てたな!!」
「知り合いかよ柿崎誰だよ!!」
ひとしきり騒いだ後、柏崎が再び立ち上がった。
「やっぱドリル買ってくる」
「いやいやいや、ドリルに至るまでにまだ出来ることあるよね!?」


「ドリルは無駄だ」


再び扉が開け放たれた。思わず身構えるが…あ、こっちは普通に開くほうの扉だわ。と座り直す。濃い紫のローブを羽織った、50代と思しき蓬髪の男が入ってきた。
「……誰?」
「大家さんだ」
「濃いな…色々と」
「下手に土地持ってて社会に出ずに本ばかり読んでるとな…色々な…」
ローブの大家は、下駄を脱いで揃えると、ローブの裾を払い振り返った。
「勝手に失礼する。…そっちの人、ドリルなら私が持っている」
よく分からないので様子を見ていると、大家さんは徐に奥の扉に近付き、その表面を撫でた。
「これをこじ開ける為に、買った」
「それなら!!」
興奮冷めやらぬ柏崎を制し、大家さんは続けた。
「――ここが出来た日にやったさ」
「………向こうには何が」
「何も。扉は溶け込むようにコンクリートと一体化していた」
「……で、この意味不明の扉を元通りに直したのか?」
訳が分からん。だったらもう全部外せよ。
「私が直したのではない…」
どうでもいいけど大家、しゃべり方がいちいち厳かなのは何のつもりだ。
「扉を破壊し、壁を直した次の日にここに来てみたら…あったのだ」
新しい、扉がな…と呟いて大家は瞑目した。
「あとは繰り返し
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ