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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四十四話 死者の代償
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だ」
「……」

百年前なら同盟の力は帝国よりはるかに弱小だった。そして……。
「死者が増えれば増えるほど、和平は難しくなる。死者の代償が大きくなるのだ。平和の到来だけでは代償が不足だと考える。百年前なら代償はそれほど大きくは無かった……」

「百年前の政治家達が判断を誤ったという事ですか」
ルパートの頬が歪んだ、冷笑だろう。露骨に感情が面に出る、悪いところだ。父親にはない欠点だな。ヴァレンシュタインに会うと更にそう思う。ルパートと同年代だがあの男が他者に対する感情を見せる事は無い……。

「誰もこんなにも長く戦争が続くとは考えなかったのだろう。考えていればもっと違ったはずだ」
「そしてフェザーンは戦争が長引くようにと動いた」
その通りだ、フェザーンにとっては両国が敵対関係に有る事が望ましかった。

「ヴァレンシュタイン司令長官は宇宙を統一する。新銀河帝国の成立だが、新帝国の帝都はフェザーンになるだろう」
「……遷都ですか」
ルパートが意表を突かれたといった表情をしている。無理もない、俺も彼から聞いた時は驚いたのだ。

新帝国はフェザーンに腰を下ろし片足で帝国を、もう片方の足で同盟を踏み締める。フェザーンが人類社会の中心になるのだ。そこまでのビジョンを持っている人間に和平など……。
「和平など笑止な事だな……」
ルパートが頷く姿が見えた……。


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