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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四十四話 死者の代償
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しかねない。そうなれば国家を維持する事さえ難しくなるだろう。つまりフェザーンの中立を保障する国家が無くなるのだ、その事がどれだけ危険か、ボルテック弁務官にも分かるはずだ』
「……」

ペイワードがこちらを覗きこむように見ている。分からないではない、フェザーンにとって帝国、同盟の崩壊は悪夢だ。国家が崩壊すれば幾つかの地方政権に分裂するだろう。彼らがフェザーンの中立を保障するとは思えない……。

むしろ軍事力の無いフェザーンは搾取の対象になるだけだ。それでも独立を維持できれば良い、最悪の場合は占領されるに違いない。特に同盟にその危険性が有るだろう。帝国は改革を行っている事により今すぐ崩壊と言う事は無い、余程の失敗をしない限りはだ……。

『帝国は劣悪遺伝子排除法を廃法にした、そして国内の政治体制をドラスティックに変えつつある。帝国はルドルフ・フォン・ゴールデンバウム的なものを排除しつつあるのだ。同盟から見て帝国を敵視する理由は消えつつある。今なら和平を結べると思う』
確かめる、いや噛み締めると言う様なペイワードの口調だ。俺だけではなく自分をも納得させようとしている……。

「しかし現状では和平は難しいと思います。帝国は同盟の存続を認めてはいません。フェザーンの存続もです」
『分かっている。こちらにも帝国からの亡命者はいるからな。彼らから聞いて帝国が何を考えているかは理解しているつもりだ』

『戦争になれば帝国は二つの回廊から一斉に攻め込もうとするだろう。当然だが同盟はそれを防ごうとするはずだ。同盟の戦力は六個艦隊、イゼルローンに二個艦隊を置きフェザーンに四個艦隊、そんなものだろう』
「確かにそうでしょう」

『帝国が優位ではある、しかしイゼルローン要塞が簡単に落ちる事は無いしフェザーン回廊も出入り口で戦うなら兵力の劣勢はカバー出来る。帝国にとっても楽な戦いではない筈だ。国内の改革を進める今、これ以上犠牲を出す事は下策だと思う、損害が大きなものになれば国民が不満を抱くだろう……』
「だから和平を……、ですか」
ペイワードが頷く姿が見えた……。



「宜しいのですか?」
ペイワードの消えたスクリーンを見ているとルパートが話しかけてきた。声は殊勝だがその眼には何処か面白がっている色が有る。

「話すだけだ、和平を請け負ったわけではない。それに試してみても悪くはあるまい、違うかな?」
「なるほど……、しかしヴァレンシュタイン司令長官はどう思われるか……」
言外にヴァレンシュタインが不愉快になるのではないか、彼を怒らせて良いのかと訊いている。こちらを心配しての事ではあるまい、面白がっているのだ。

「鼻で笑うだろうな」
「それは」
「私も鼻で笑う」
ルパートが唖然とし、そして苦笑した。“それはいささか……”
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