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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四十四話 死者の代償
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縛後は時折連絡をしてくる。こちらとの距離を縮めようというのだろう。或いはこれまではオリベイラに俺との接触を禁止されていたということもあり得る。

「それで同盟の新しい弁務官は決まりましたか?」
『まだ決まっていない。難航しているようだ、これで三人目だからな。トリューニヒト議長も慎重にならざるをえんのだろう』

ペイワードの顔が曇った。今回のクーデター未遂事件で協力した事といい、どうやら同盟に、いやトリューニヒトに思い入れが有るらしい。あまり良い事ではないのだがな。

同盟の弱点は軍事力の低下だけではない、人材の少なさもその一つだ。フェザーン駐在の高等弁務官を見ても分かる。帝国はレムシャイド伯がずっとその任に有るが同盟はヘンスロー、オリベイラ、どちらもその任を全うできずにいる。

政治家達を見ても分かる。帝国は改革派と呼ばれる若い政治家達が頭角を現してきた。彼らはリヒテンラーデ侯、ゲルラッハ子爵達と共に帝国を変えようとしている。古い勢力と新しい勢力の融合。極めて良い方向に進んでいる事が分かる。

『それに比べると軍の方が行動は早いようだ。第九艦隊の司令官がクブルスリー提督に決まった』
「クブルスリー提督ですか、なるほど」
元第一艦隊司令官、いずれは統合作戦本部長と目されていた人物だ。悪い人事では無いだろう。

『そちらの状況はどうかな、ボルテック弁務官』
「明後日にはヴァレンシュタイン元帥の結婚式が有ります。その準備で大わらわですよ。国を挙げてのビッグイベントですから」
俺の言葉にペイワードが笑い出した。

『個人の結婚を国家的行事にするか……、専制国家ならではだな。間違っても民主共和制国家では無理だ。しかし悪くは無い』
「そうですね、悪くは有りません。皇帝、軍、官僚、貴族、そして平民……、皆がこの結婚式を喜んでいます。喜んでいないのは一人だけです」
ペイワードが面白そうな表情をしている。

『その一人はヴァレンシュタイン元帥だろう』
「分かりますか」
『分かるとも。結婚式と言うのは新婦と周りが盛り上がるものだ。盛り上がれば上がるほど新郎は興醒めになる、そうじゃないかね』
心当たりが有る、思わず苦笑した。ペイワードも笑っている。

『ケッセルリンク補佐官にはまだ難しいかな』
「いえ、大変参考になります」
『いずれ君も身をもって知る事になる。覚悟しておくのだな』
「はあ」

ルパートの頬が強張っている。彼はからかわれるのには慣れていない。何処か余裕が無い、遊びが無いのだ。才能はともかく父親にはその辺りが及ばないだろう。

『まあ楽しい話はこの辺にしておこう』
ペイワードが笑みを消した。はてさて、何やら話が有るらしい。ペイワードがチラとルパートに視線を送った。

「私は席を外した方が宜しい
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