すれ違い、
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し、それなら試させてもらおう」
「はい?」
「なに、仲間に引き入れるにしてもそれに見合った実力は必要だ。洗脳を逃れられるだけなら別に仲間にしても無意味だしな」
「いえ、ですが……」
「なに、ちょっとした余興だよ」
男は楽しそうに微笑む。
そして、数日後。男は思いも寄らない結果に頭を悩ますのであった。
?控え室?
無月 影は思い出す。
あの試合の最中、自分が何をしようとしていたのか。そして何故、俺はあんな事をしようとしていたのか。
────アレは俺じゃない。
スイッチが切り替わるように自分の意識が別の誰かに侵食されるような感覚。そして、抑えられない衝動に駆られ俺は先輩を殺しそうになった。
あの時、試合終了のアラームが鳴っていなかったら……考えるだけで俺の身体は震えていた。
あの瞬間の記憶は鮮明に残っている。
だが、俺は望んでそんな事をしたつもりは無い。
そう、その筈だ。なのに、なんであの瞬間を俺は楽しい、と思ってしまったのか。
矛盾してる。
俺はあの瞬間を楽しんでいた。でも、俺は────。
解らない。俺はどうしてしまったんだ。
考えて悩んでも答えは出ない。
だが、悩まずにはいられなかった。
「……クソっ」
俺は────。
「────影君?」
名前を呼ばれ。ふと、我に帰った。
後ろを振り返るとそこには零宮が居た。
「零宮……?」
「ごめん。驚かせちゃった?」
「い、いや。そんなことないよ」
俺は無理矢理、笑顔を作る。
こういう時は愛想笑いの練習をしていて良かったと思う。その笑顔は不安なんて感じさせない顔で自分の気持ちを悟られることはない。
「それで、何か用?」
笑顔で、愛想笑いで言った。
すると零宮は一瞬、躊躇うような表情を見せ。
「対した用じゃないんだけど……その、試合。お疲れ様」
そう言って差し出されるペットボトル。
差し入れのようだ。俺はそれを「ありがと」と言って受け取り一口。
いい感じに冷えていて飲みやすい。
中身は普通の水なのにこんなにも美味しいなんて。疲れているせいか、この水がお高いのか……多分、前者だと思うけど少し、リラックスできた。
「ふぅ、」
一息つくと改めて疲れを実感した。
無理もない。あれだけの人数を魔法なしで無効化したんだ。疲れて当然かな。
「影君、さっきの試合凄かったね」
「そうかな。俺なんてまだまだだよ」
「そんな謙遜しなくても」
と、零宮は俺の事を褒めてくる。
でも、実際はそうなんだ。俺は弱い。
今回の試合は意表を付き、相手の心を揺さぶったから魔法を使わず勝ち残れたんだ。最初から俺が魔法を使わず、肉弾戦で試合に望むと
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