すれ違い、
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
……このアングルは!?
「膝枕……?」
「ん、どしたの?」
「い、いや。なんでもない。
いや、なんでもない訳は無いけど」
俺は何故、零宮の膝で眠っていたんだ?
おかしい……眠る前の記憶がない。何故、このような経緯になったのかさっぱり分からない。分からないが……なんかラッキーだと思っている自分がいた。
「体は大丈夫?」
俺の頬を撫でながら零宮は言った。
ひんやりと冷たい手。冷たくて気持ちいいな……おい、待て。落ち着け俺。今は状況を整理するんだ。
「ぁ、あぁ。大丈夫」
とりあえず体は動く。どこも支障はない。
体調も良好。ここまでで分析できたのは外傷なし、戦闘は行っていないようだ。あるいは無傷で戦闘を切り抜け、誰かに魔法を当てられた……それなら記憶の欠落も納得がいく。
「良かったぁ……」
安堵の溜息を吐く零宮。
そんなに俺の事を心配してくれたのか……?
「他は大丈夫?
頭がボォーっとするとか記憶が曖昧とか?」
「強いて言うなら、記憶が曖昧かな。
その……なんでこんな状況になってるのか覚えてなくて」
覚醒し始めた頭で何が起こったのかを思い出そうとしても何も思い出せない。
すると零宮は「やっぱり、後遺症が……」と呟き。
「もう少し休みなよ。私の膝で眠れるなんて君は幸せ者だね」
なんて言いながら俺の頭を優しく撫で始めた。
するとなんでだろう。段々と……眠くなってきた。
さっきまで眠ってたのに……また、眠くなるなんて……。
徐々に強くなっていく睡魔。俺はいつの間にか────。
────眠ってしまてっていた。
「おやすみ、影君」
少年の頭を撫でながら少女は言った。
気持ち良さそうに眠っているその表情は幼さを残しており、普段の顔付きと違って可愛らしい。やはり、まだ子供なんだね。
普段表情より、私は今の方が好きかな。
無月 影は普段から愛想笑いをしている。
出来る限り周囲にとけ込めるように、出来る限り自分の存在を悟られないように自分を隠して生きている。その笑顔の仮面は他人からすれば笑顔の似合う少年にしか見えないもので彼の本当の姿を知るものは少ない。
だが、少女は反射的に影の愛想笑いに気付いていた。
これは彼の本当の姿じゃない。影君は自分を隠している、と。
直感と言えばいいのかな。影君は嘘を本当にしているような……そんな気がした。
嘘は付いていない。でも、嘘を付いている。
自分を隠している。そして、自分を騙している。
何故、彼がそんな事をしているか……私には解らない。でも、私には影君がとても辛そうに見える。無理をして偽りの自分を演じているように見えてしまうのだ。
彼はとても大きな悩みを抱えている。
きっと、それは私なんかじゃ計り知れないくらい暗くて深い。自分を偽っていても、自分を演じていても
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ