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第七十五話 捕虜交換式典です。
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時には馬鹿馬鹿しいこともありますね、外務委員長。」
と、フィオーナが思わず言ってしまったのは、原作に置いてイゼルローン要塞で行われたキルヒアイスとヤン・ウェンリーとの間で行われた捕虜交換式典に思いをはせていたからかもしれない。
外務委員長は一瞬目を見開いたが、すぐにそれを微笑に変えた。
「私にとってはこれは必要そのものの事ですよ、エリーセル大将閣下。なぜならばこれを済ませませんと、私の退職年金がもらえないのですから。」
一瞬狐につままれたようなフィオーナだったが、顔を赤らめて照れたようにはにかんだ。キルヒアイスの発言は相手がヤン・ウェンリーであるからこそ、受け入れてもらえた言葉であり、それを当人もよく自覚をしていたであろうが、フィオーナはこの捕虜交換式典を原作と同義ととらえ、単に重ね合わせてしまっただけなのである。
「ごめんなさい。私の発言はあまりこの式典にはふさわしくないものであったかもしれませんね。」
「そんなことはありませんよ。のちの宴席でまたお会いいたしましょう。これは社交辞令ではありませんでしてよ。」
外務委員長の微笑に救われたように、フィオーナは文書を相手に渡し、相手から文書を受け取ると、固い握手を交わした。その歴史的場面をおさめようと一斉にフラッシュライトがたかれるのはこの場合仕方のない事であろう。歴史家にとっては、この日が膨大な歴史書に編纂される新たな項目及び考察への材料を提供することとなった日であり、後年の学生が歴史の教科書の暗記事項にまた一つ彼らの頭を悩ます要素が加わったことを恨む日になりそうであった。
他方、外務委員長の後方に控えているビュコック中将らはこの帝国軍の若き美貌の才媛の姿を目の当たりにしてそれぞれに抱いた思いを咀嚼していた。ライトブラウンをシニョンでまとめた美しい髪の毛先の一筋は緩やかなウェーヴを描きながら白磁の滑らかな頬を縁取っている。灰色の大きな瞳は何物にも染まらぬ美しい輝きを持ちながら、見るものをして決して目をそらせることのないような穏やかな光を放っていた。すっとした鼻梁とかわいらしい口元には一点の染みもなくただ純真さが現れている。背はだいたい165センチほどと決して高い方ではないが、銀の刺繍が施された黒のスカートから伸びる美しい足には何かしら鹿のようなしなやかさも秘められているかのようである。すらっとした細い体には無駄というものがないが、それ以上に隙も無く、単なる非力な女性ではないことがうかがいしれた。
「こんな御仁が帝国軍にはいたのか。」
ラップがヤンにささやいた一言は極めて短いものであったが、その中には計り知れないほどの様々な思いがたっぷりと詰め込まれていた。
また、彼らはフィオーナの後ろにいたオレンジ色の髪をポニーテールにした女性も彼らの耳目を引いた。こちらはフィオーナ
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