第7章 聖戦
第159話 追儺
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ズの炎の塊の残滓を感じさせる物はなかった。
しかし、地獄に行けない悪霊とは言え、地球世界でこのカブ頭が得た存在の力は世界的なレベル。
次々に産み出され、撃ち出される炎の塊はその程度でどうこう出来る物ではない!
あらゆる物を……いや、物、者、モノすべてを燃やし尽くす地獄の業火、それまでゆっくりと接近して来て居た一群の炎塊が俺との距離を三メートルまで詰めた瞬間、急にそのテンポを変える。
有るモノはまるで獲物を狙う蛇の如く、一瞬の溜めを行った後、丁度、俺の目線の高さまで跳ね上がり、
また有るモノはそれまでの、まるで蛇行するかのような動きを更に強化。一瞬、視界から消えたかのような大きな半円形を描き、正面を向く俺の死角から襲いかかる。
また有るモノは跳ね上がる高さを腰の位置に留めながらも、三方向から僅かに時間差を付けながらも一点を貫くかの動きを開始する。
但し、この程度の攻撃でどうこう出来るほど、俺の今までの人生も平坦ではない!
「西海の神、名は祝良!」
ウン! そして続く一閃。
振るわれるは王権の剣。一度その鞘から抜かれれば、決して持ち主を地に伏せさせる事はない、と歌い上げられた必勝の剣。剣先より零れ落ちるは蒼銀の煌めき。
その一閃、一閃ごとに斬り払われるは邪気。魔炎が消される度に、大気は清浄な物に変わって行く。
「ば、馬鹿な、剣圧だけで俺の炎塊を無効化して仕舞うだと?」
掌底を強く突きだす事により、黒き陽炎から無限に発生し続ける内の五から十の炎の塊に新たなベクトルを与えながら、驚愕の言葉を呟くヴェルフォール。瞳は一歩一歩ゆっくりと、しかし一切の遅滞もなく近付いて来る俺を映したまま。
「南海の神、名は巨乘!」
タラク!
その姿は伝説の騎士物語に登場する英雄の如し。黒いベールを纏う悪の魔法使いを誅する勇者の佇まい。
生成され続ける龍気が俺の周囲に存在する精霊を活性化させ、強固な霊的防衛圏、精霊の護りを形成する。
おそらく、今の俺が維持している防御用の術をこの瞬間にすべて解除したとしても、今のヴェルフォールの放つ炎の塊では傷ひとつ付ける事は叶わないであろう。そう感じさせるだけの龍気を纏う。
しかし――
しかし、成るほどね。矢張り無能は無能、と言う事か。
流石にバトルマニアではないので、がっかりした、と言うほどでもないのだが、それでも少しの落胆を覚えながらそう考える俺。
何故ならば、今現在、俺が剣圧で炎塊を斬り捨てているように見えているのなら、コイツは霊気の流れを感じる事の出来ない二流以下の雑魚。
少なくとも、モノになるレベルの見鬼の才には恵まれていない。
四方八方から飛来する炎の塊
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