第7章 聖戦
第159話 追儺
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体。その身から湧き上がる陽炎の如きモノ。
この時、春の陽気に設定されている室温が僅かに上昇した。
……成るほど。
「オイ、カブ頭」
その僅かに宙に浮いた身体に重なるように存在する、まるで陽炎の如きモノ……はっきりと見えている訳ではない。一般人の目から見て見えているのか、それとも見えていないのか分からない霊的な物質で形成された黒い身体を見つめながら、そう話し掛ける俺。
気分的に言うと嘆息混じりに。また、神に選ばれた自称英雄さまを相手に弱い者イジメに等しい戦いを演じなければならないのか、……と言うある種の徒労感にも似た思いに囚われながら。
もっとも……。
何が炎の魔神だ。何が地獄に行って後悔しろ、だ。
そもそもオマエ自身、地獄に行く事さえ出来ない低級の悪霊じゃねえか。
……などと考えて居たのも事実なので、その感情を隠す事に失敗しただけなのだが。
「誰がカブ頭だ、このクソがき」
それまでと違う、妙にぞんざいな俺の言葉使いに対して、周囲のギャラリーから驚きの声が上がる。
但し、その中に何故か妙に落ち着いた感情が混ざって居るのも同時に感じた。おそらく、あのジョゼフ王の息子なのだから、イザベラ姫の弟なのだから、ただ大人しく礼儀正しいだけの人物ではない、……と言う事がこの瞬間に確認出来たと言う事。成るほど、矢張りカエルの子はカエルなんだな、と多くのギャラリーたちが納得したのかも知れない。
「オマエの中に居るジャック・ヴェルフォールに伝えてやってくれ。本当にオマエと相性の良い属性は炎ではなく土だ、とな」
まぁ、何にしても思わず発して仕舞った言葉が、妙な具合に相手を挑発する言葉となったのなら、それを活かすべきか。そう考え、言葉を続ける俺。
そう、確かに単純な攻撃力だけを考えるのなら、ハルケギニアの系統魔法の中で言うのなら炎系の術が攻撃力は高い。当然、高いのだが、但し、コイツの名前、ピエールと言うのは古いガリアの言葉では『岩』と言う意味。
本名の中に土に関する言葉がある以上、コイツと相性が良い術の系統は土だと考える方が妥当だと思う。
少なくとも、地球世界の魔法に関わる者の例から言うと、その可能性の方が高い。
多分なのだが、コイツ。ジャック・ヴォルフォールの本当の魔法の才はシャーマン系。ただ、ハルケギニアでは神や魔物を自らに憑依させるタイプの術者及び術に関しては聞いた事がないので……。
おそらく、普通の場合ならその魔法の才能を開花させる事もなく埋もれて――
――仕舞う存在。一瞬そう考え掛けて、しかし、直ぐに自分の考えの甘さにホトホト嫌になる俺。
何故ならばこの世界はクトゥルフの邪神。這い寄る混沌が暗躍している可能性が異常に高い世界だから。奴は望めばどんな能力でも与
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