第7章 聖戦
第159話 追儺
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……俺としてはこのままあっさりと武装解除をしてくれると色々と有り難いのですが。
しかし!
「荒ぶる炎よ、その神威以て、我が敵を滅殺せよ!」
魔術師の証たる闇色のマントを翻した瞬間、その手に抜かれる銀の光。同時に、それまで此方には聞こえないレベルで唱えられて来た、このハルケギニア世界独特の系統魔法の呪文を完成させるジャック・ヴェルフォール。
その瞬間、黒い魔法使いの顔に残忍な、更に勝ち誇った笑みが浮かぶ。おそらく、奴の感覚から言うと、完全に不意打ちが成功した。そう言う気分なのだと思う。
一瞬、恐慌状態に陥り掛けるギャラリー。その場にしゃがみ込む者、逃げようとして、逃げる場所などない事に気付く者。
そして、為す術もなくただ呆然と立ちすくむ者。
しかし――
「チッ、矢張り悪魔の技を身に付けているのか」
しかし……。いや、当然、精霊と契約を交わす事の出来ない系統魔法使いが、この場所で魔法を発動出来る訳などなく。
そより、ともしない空気。微かな熱すら発生させない剣。
そして空しく過ぎて行く時間。
大体、敵対する他人の洞や工房に土足で踏み込んで来て自らの魔法を問題なく発動させる事が出来る、などと考えて居る御目出度い魔法使いが居る事の方が、俺としては不思議なのだが。
俺ならば自らが持つ霊気のみで発動する術を細かく行使し続けるか、もしくは事前にその場に施された結界系の術を調べ上げた上で、其処に微かな綻びを作り出して置く。
これはルールのある決闘や術比べのような物ではない。準備はし過ぎるぐらいにして置くのが普通だと思うのだが。
もう泣き出したくなるほどの徒労感。出来る事ならば、このままコイツの事は捨て置いて控えの間に帰って一休みしたい気分なのだが。大体、本来の俺は多くの人に見つめられるだけで大きく疲れを感じるような繊細な神経しか持ち合わせていない一般人。その俺が、このような衆人環視の中で本来の自分とは違う種類の人間の演技を続けながら戦うと言う事がどれだけ精神を消耗させるか考えて欲しいぐらい。
いや、俺自身が場の雰囲気に影響され易い神獣としての側面が大き過ぎる可能性……周りの人間が発する期待やその他の感情をプレッシャーとしてより強く感じて仕舞う可能性の方が大きいのかも知れないが。
但し、流石にそんな職場放棄にも等しい事が現実に為せる訳もなく、更に言うと現状、自身が置かれた立場から非常に哀しげな瞳でジャック・ヴェルフォールを見つめる事しか出来ない俺。何故ならば、現在の俺の立ち位置は為政者側で、その支配している領内から裏切り者が現われたのだから、コイツを自らの手で誅する事が出来そうだと言って楽しそうな顔をする訳にはいかないから。
裏切り者が現われたと言う事は、自分たちの考え
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