第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#42
FAREWELL CAUSATIONU〜Double Detonation〜
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たれた筈の獅子が修復された装甲、
咬鎖による破砕も僅かに屹立した。
「そんな、完全に禁縛して思いっ切り引っ張ったのに、
どうしてダメージがないの?」
「広域に張り巡らせた法儀も発動しておらぬ、
にも関わらずどうやってあの場を切り抜けた?」
唖然とする二人に変わりその解答を語るは声無き水、
透明度の高い清流が光の反射とはまた別に、
キラ、キラ、と艶やかに煌めいていた。
眼下の波だけではなく運河全体に、
おそらくは渦巻く激流が荒れ狂っていた時から、
シャナの仕込んだ刃とは “別のナニカ” が
水の蟻地獄に 「混入」 されていた。
その “ナニカ” とは。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッ!!
「“黄 蓮 参 拾 参 式 想 滅 焔 儀”
『捧 げ し 嬰 児 の 喪 失 花』 」
古風な石造りの河橋、その中央に佇む少女の背後に、
彼女のスタンドで在るが如くあるモノが蠢いていた。
その形状は有皮鱗茎、色彩は麗らかなサルファー・イエロー、
有り体に表現すれば石面に咲いた巨大なチューリップと云った処だろうか。
その卵形漏斗状の花弁の中から、
視るだけで陶然を喚起される黄蜜が惜しげもなく河面に流し込まれ、
得も言われぬ甘美なる芳香が周囲一体を充たす。
血で血を洗う戦場には似つかわしくない、夢境の幻想光景。
しかしコレこそが残酷無尽の咬断から
ソラトを救った能力そのモノに他ならない。
どんなに鋭い刃でも、否、“鋭いからこそ”
油などに塗れた物体に斬りつけたとき
その刃先が “滑って” しまう
刃自身に刻み目、ソレが超高速で動いているのでもない限り
粘性のある物体を瞬時に両断する事は困難を極める。
ティリエル咄嗟の機転で河面に流し込んだ多量の黄蜜、
それが渦の攪拌作用も手伝ってソラトの装甲至る処に絡み付き
砕刃を摘出すると同時に獄鎖の魔の咬断から脱出せしめる結果となった。
本来焔儀大系内でも比較的低位、
戦闘ではなく疲弊した肉体や精神の回復に充てる
法儀であるが、その特性を詳 らかに把握しているならば
ソレを応用して時にコレ以上ないという 「機」 が在る。
この事象はスタンドバトルに於いて特に顕著であり、
相手を欺き予測を裏切る事を主体とする異能戦闘ならば
『能力そのもの』 だけではなくその 「発生過程」 まで
考慮して戦いに組み込む必要がある。
ティリエルは心得ていた、敬愛するアノ女性には及ばないが、
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