第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#42
FAREWELL CAUSATIONU〜Double Detonation〜
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』
ティリエルの想いに応えるが如く獅子が吼えた。
激流に翻弄され狂った感覚のなか “本能” のみで、
打つべき術と向かうべき場を瞬時見定めそして放つ。
歪む円環を縦に割く凄爪螺旋双掌撃。
自然の法則を味方に付けているとはいえ
片腕しか使っていないシャナと比べその威力は歴然の開き、
ましてやこの場合力を広域に拡散させるではなく一極に集中している。
どんなに途轍もない渦だったとしても、
“渦で在るが故に”
荒天の乱流には一点だけ動かない部分が存在する。
それは取りも直さずのその 『中心』
渦を生み出し続けているシャナのいる位置だけは
蟻地獄の死点と成っている。
故にその位置に飛び込めば勝敗は明らか、
奇しくも武器を鎖の先端に巻き付けてしまっている少女に
防御と反撃の術はない。
全身を刃塗れにされ罅割れた被甲の隙間から
山吹色の炎を散らしながらも、
血染めの獅子は捨て身の叛逆に打って出た。
藻掻かず衰弱したと見せ掛けたのは、
この渦を突破する力を溜め込む意図を欺くための擬態。
思考するのではなくそれこそ野生動物が自然に行うように、
ソラトは本能にのみでこの危機的状況を打開せしめた。
動きの鈍る水中とはいえ直近まで踏み込めれば、己の不利はそのまま優位に。
渦を生み出しているが故に後退できない少女に組み付き、
後は装甲の重量を利用してその華奢な躰を齧り尽くすのみ。
万全と想われたシャナの執った術にも想わぬ弱点が在った、
今の己の力は海中の乱流だろうが地上の暴風だろうが容易に超越せしめる。
(って、貌してるわよ! おまえッ!)
シャナに背を向けた双掌の構えから反転、
力の流れを最大限に生かして撃ち出された右の尖撃が、
それを繰り出すより前に躰を捻っていた
少女の体捌きにより紙一重で躱された。
だが水中とはいえ凄まじい威力とキレで放たれたモノ故に、
その衝撃と水圧のみで制服の脇が裂け露わになった白肌から血が繁吹く。
「ぐ――ッ!」
だがこの事は折り込み済み、
無理に足掻かず激流に身を任せるように
していた様子から類推できた。
だからこの後の展開も予測出来る、
相手はこのまま肩の傷口に齧り付く為
猛攻を繰り返し組み付こうとする筈、
そしてそれを防ぐ術は自分にはない。
水中で相手より鋭い攻撃が繰り出せる能力でもあれば話は別だが、
自分は 『スタンド使い』 ではないしそのような能力も持ってない。
この後攻められれば終わり、“攻め続けられれば終わり” だが。
グャギンッ!
不可避の猛攻を繰り出すため、シャナに覆い被さるように
凄爪を拡げた獅子が突如停止した。
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