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STARDUST唐eLAMEHAZE
第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#42
FAREWELL CAUSATIONU〜Double Detonation〜
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変化、
領域に在るモノをスベテ呑む込み粉砕する水の竜巻となって 
異界の魔獣に服従を強いる。
 さながら寓話の一場面、傍若無人の限りを尽くす魔物を
一人の魔術師が知略を以て討伐を果たす伝承の光景。
「お兄様ッ!」
 その魔物を心優しき彼の妹が延ばした荊で大渦から救い出そうと試みる。
 しかし。
「え!?」
 卓越した自在師で在るが故にその強度は折り紙付き、
その細い蔓一本で鉄骨をも吊り上げられる荊が渦に触れた瞬間、
枯葉の如くバラバラに引き千切られた。
「何ですの!? 水流の圧力だけならこうはならないはず!
一体あの渦の中には “ナニ” が仕掛けてありますのッ!」
 水中に飛び込めないティリエルにその解答(こたえ)を知る術はない、
だがソレの効果は徐々に確実に、渦に翻弄されるソラトの躯を削り取っていた。
『LUUUUUUUUUUUッッ!! LULULUッッ!!』
 剥がれる風貌、毀れる鬣、削がれる装甲、
ソラト本体には届かない微細なダメージではあるが、
一合から被虐しまくっていたシャナがようやく攻撃に転じた。
 相手の動作を封じる水の蟻地獄、それを切っ掛けに抜け目ない一手を打っていた。
 投擲目的の火刃 “蓮華” それを更に細かく砕き
渦巻く激流の中に混ぜて攪拌させる。
元々刺すコトが目的の焔儀なので熱量よりは硬度に力が注がれ
水で表面の温度が下がってもさほど問題ではない。
 加えて硬質化した黒衣の切れ端も織り交ぜて迷彩に、
云うなれば水硝子(みずがらす)の蟻地獄、
ソラトの感覚を阻害しながら後はじっくり時間を掛けて相手が力尽きるのを待つだけ。
 あの圧倒的戦力差がこうもあっさりと、
水の中という状況がソラトには枷に、
シャナには追い風と成って立場を逆転せしめた。
( “一点()られるってコトは、一点不利になるってコトじゃないのよッ!” )
 まだ日本にいた頃、夜のリビングでトランプやダイスゲームに興じていた折り
承太郎が云っていた言葉 (何回ヤッても一度も勝てなかったが)
 最終的な勝利の為に、敢えて差し出す敗北がある、
窮地に陥ったなら陥ったなりに、
ソコでしか気づけない発想が有る、出来ない行動が在る。
 己の優位を確信した時、勝機が飽和状態に達した時、
相手の危機感は脆くも霧散する。
 それを如実に体現するのが現在のソラトの状況、
シャナと同じ、否、それ以上の術を撃つコトが出来たにも関わらず
重傷を負い逃走を図った少女に先手、反撃を許すという不覚。
 全ては高過ぎる戦闘力が故に起こった事、
己に優位な場所へ誘い込むシャナの陽動を本当に逃げたと思い込み、
追いつかれる迄の間、この状況を逆に利用する陥穽(ワナ)
巡らしていた等とは夢にも想わなかった。

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