File.2 「見えない古文書」
\ 6.15.AM.9:21
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櫪氏が唄えば、それにキヌさんが呼応する。キヌさんが呼応すれば、それに櫪氏が呼応する…。
- 逆巻ける 時を昇らば 夏草の うつろう風も いずれ還らん -
そうか…これが櫪家現当主が得意とする解呪の舞いか…。これ程に美しいものだとは、私は夢にも思わなかった。
だが…そんな思いも束の間だった…。その幻想的な風景の中、突然あの古井戸のあった場所…その後に残った土山が盛り上がったのだ。私はギョッとして櫪氏とキヌさんをみたが、二人はそれに動じることなく舞い続けていた。
- 己ぇ…奪ったものを奪い…壊したものを壊してやる…! -
そう不気味な声が響いたかと思った直後、盛り上がった土の中からいきなり骸骨が姿を現し、私はもう少しで失神しそうになってしまった。
- そう容易く…滅ぼすものか…。我が怨み…思い知らせてやる…! -
一体…どこから声を発しているのだろう…?骸骨はまるで生きているかのように土から這い出し、少しずつこちらへと近付いてきた。まるで…怨念の塊であるかのように、そこから禍が噴き出しているように思え、私は身動きすることが出来なかった。
- 少しずつ…恐怖の中で死に逝くがいい…! -
骸骨は剥き出しになった歯をカタカタと鳴らし、動く度に目玉の無くなった穴から土を溢していた…。その様は…もはや恐怖そのものだった…。だが、そこでもう一つの声が響いてきたのだった。
- もう止めなさい。怨んでも、もう何一つ戻りはしないのだから…。怨むのであれば、僕一人を怨めばいいんだ…。 -
その声は、はっきりと男性だと分かる声だった。私が声の出所を探してみると…あの如月信太郎の木乃伊が淡く光っていたのだった。
- 信太郎様…貴方様は自分だけを怨めと申しますが…貴方様は私を裏切り、かの男の甘言に溺れた…。女である私より…男のあやつを…! -
目の前の骸骨から見えない何かが溢れ出るのが分かった。邪気、障気、怨念…そういった言葉で表現出来るかも知れないが、でも…そんな生温いものじゃなかった。
私はその中を、ただじっと時間が過ぎ去るのを待つしかなかった…。私には何も出来ないのだから。
その凄まじい怒りを露にした骸骨を前に、木乃伊になった信太郎は言った。
- それは…お前も知っていたこと。今更、僕の性癖を咎めるというのかい?
-
- そのせいで…私達三人は闇に消え、私達を消した卑しき者等もまた、この漆黒の闇に沈んだのです…。そうしたのは…あの石川惣助ではないですか!なのに…自分だけを怨めとは…。今も、彼の者を愛していると…? -
- それはない。愛からは遠く離れてしまった。だが…僕は怨むことに疲れてしまったんだ…。そうして…お前と息子に会いたいと切に願った…。だから…こうしてここに
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