贖罪-エクスピエイション-part6/赤い炎の記憶
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から、魔法でしかできないことを誰もが利用できる技術を研究したり、若者たちに授業を通して戦いの虚しさや愚かさを伝えようとした。
「だが今でも、君たちに私と同じ経験をしてほしくないのは変わらない」
「ミスタ・コルベール。それって、さっきあいつが言っていた……」
「ダングルテールのことだな、コルベール」
キュルケが質問しようとした途端、鋭い声がシュウたちの耳に入る。
アニエスの声だ。振り向くと、彼女はコルベールに剣を向けてきたではないか。
「何をしている!?」
「そうよ、剣を下ろして!」
思わず声をあげるシュウとキュルケ。だがアニエスは下ろさない。
「貴様だったんだな、私の故郷を滅ぼしたのは」
「故郷……?……ッ!そうか、君はあの時の……」
コルベールはアニエスの口から放たれた故郷という単語に反応を示す。静かな態度だがアニエスは、その瞳に……憎しみの炎を燃え上がらせていた。
魔法学院の地下公文書の資料を閲覧できず、故郷を焼いた実行犯がうやむやになるかと思ったが、ずっと会いたかった仇をようやく見つけ出せた。
「そうだ、貴様が燃やしたダングルテールの生き残りだ」
「そうか、生きていてくれたのか……」
コルベールがふっ、と安らかに微笑むと、アニエスはその笑みを猛烈に不愉快に受け止めた。
「なぜ笑う!貴様、わかっているのか!?貴様の手で何の罪もない村の皆が殺され、私もどんな思いで生きてきたと思っている!
なぜだ……なぜみんなを殺した!?」
彼女は遂に見つけた仇を前にして、普段の冷静さが保てなかった。今すぐにでも切り殺してやりたくて我慢が限度を越えようとしていた。金のためにダングルテール焼却を命じたリッシュモンは先を越された。だが、目の前のこいつだけは自分の手で殺さなければ気が済みそうになかった。
「……命令だった。ダングルテールに疫病が蔓延していると、被害が拡大する前に処理しなければならない……そう命令を受けた」
「疫病……だと!?」
アニエスは目を見開く。
「バカな、それは嘘だ……」
まだ幼かったが、アニエスの記憶では、国が危惧するような病気は発生などしていなかった。ダングルテールは実にのどかで平和な村だった。
「ああ、その通りだ。部下が教えてくれたよ。疫病の痕跡がなかったと。
後でわかった。利権がらみの新教徒狩りだった」
当時の記憶をたどりながら、コルベールは語りだした。
20年前、コルベールは『魔法研究所実験小隊』と呼ばれるトリステインの秘密部隊を率いていた。彼らの任務は表沙汰にされず、所謂公式の裏家業を仕事としていた。
国から汚い仕事を押し付けられる汚れ役だが、若い頃のコルベールは構わなかった。国のために汚れ役を買うことをむしろ誇りに思えた。
そして、リッシュモンを依頼人として彼はダングルテールに蔓
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