贖罪-エクスピエイション-part6/赤い炎の記憶
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私はもう逃げない。君の憎しみと向き合いながら、未来のために生きたい」
アニエスは、こんな自分を……大切な人たちを殺しておきながらのうのうと生き延びたがっている卑怯者にみえるかもしれない。だが、生徒たちがシュウの言う通り、アニエスと同じ憎しみを抱えて生きることになるのなら……アニエスにさらに深い憎しみを向けられる覚悟をしなければならないかもしれない。
「もし気に入らなかったり、私がまた道を踏み外したら、その時はすぐさま私を斬ってくれ。他の誰にも邪魔はさせない」
「先生…」
真っ直ぐ、自分を見据えてくるコルベール。自ら覚悟を決めたコルベールに
アニエスはしばらくコルベールを鋭い視線で睨み付け、剣先を下さなかった。
だが…シュウ、キュルケ、リシュ。三人の強い意志を持った視線に当てられ目を閉じると、その件をついに鞘に戻し踵を返す。
「…いいだろう…命を救われた恩と、この者たちに免じて、今はその命を預けておく。だが、もし貴様が道を外れたり私の目の届く場所から逃げるようなことがあれば、その時は貴様の首を切り落とす」
学院の方へ、被害状況確認のため、引き返して行った。去り際の彼女の顔は、激しい葛藤を抱いているのを露わにしていた。
「ありがとう…クロサキ君。命拾いをしたよ」
「私からも、お礼を言わせて頂戴」
二人からの礼を背に受けるシュウ。しかし、シュウは笑うことなく静かに呟きだした。
「…我ながらよく言ったものだな。憎しみが災いを呼ぶ、とか…」
どこか自分自身を嘲笑しているような言い方だった。シュウはそれ以上、何も言わなかった。いや、言えなかったのだ。
疲労とダメージが蓄積した果てに、彼は意識を手放して倒れてしまった。
「クロサキ君!」
「お兄ちゃん!」
最後にシュウの耳に聞こえたのはリシュとコルベールの声。
まったく、何度もぶっ倒れるな…俺は。
意識を手放す直前に自分をそのように嘲った。
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