贖罪-エクスピエイション-part6/赤い炎の記憶
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」
メンヌヴィルは、自分の目の前にいる『それ』に対して、あの時よりも強さを増した炎を浴びせた。だが…『それ』はびくともしなかった。まるでそよ風でも浴びているようなすまし顔を浮かべているのを、彼は奴の温度から感じとった。
だめだ…俺はここでこいつに殺される。メンヌヴィルは死さえも覚悟した。だが『それ』は…ダークメフィストと名乗った黒い巨人は言葉を発した。
――――お前ほど、人間を殺して楽しむ人間は久しぶりに見た
「なに…?」
自分を殺さないのか?顔を上げるメンヌヴィルに、メフィストは覗き込むように彼に顔を近づけて話を続けてきた。
――――弱肉強食の世界に、正義も悪もない。
――――あるのは、強き者が生き残るという結果だけ。つまり…
――――力こそがすべてに優先させる真実。お前は…それを理解している。
「貴様…何者だ?」
光のない義眼で睨みながら、メフィストに尋ねた。
――――戸惑うことはない。メンヌヴィル。私は…お前の影。
――――私と一つになれ。お前の闇の中でも生き残ろうとする様は、我らが主の眷属にふさわしい
――――お前から光を奪った、あの男を焼く力を、お前に…そして世界さえも焼く力を、与えてやろう
メフィストは、黒い霧状の闇となって、メンヌヴィルの中に入り込んだ。
彼はメフィストと一つになったことで、これまでにない力のみなぎりを感じた。
――――お前の力を発揮する機会は必ず訪れる。そしてあの男を焼くチャンスもな…
――――それまで、もっと強くなるがいい…
これが、メンヌヴィルがダークメフィストと一つになった日だった。
いつか、手に入れた闇の力で強敵と殺し合い、焼く楽しみの日が来るのを、彼は待ち続けてきた。
そして光を失ったあの日から実に20年…ようやくその時が来た。目の前にこうして立っている光の巨人。彼もまた焼き甲斐のある相手だ。闇の力をフルに使うに値する戦士。
しかし、本当に焼きたい相手は、彼ではない。
この力で…自分から光を奪ったあの男…『隊長殿』をこの手で。
それが、彼のこの世で最も望んでいる…狂気に満ちた願望だった。
アニエスの頭の中にも、あの日の悪夢が蘇る。
20年前……アニエスはまだ3つか4つだった。父と母に愛され暮らしていたごく普通の幼い子供だった。
だがあの日、彼女の日常は前ぶれなく奪われた。真夜中、自分が寝ている間にその悲劇が起きた。
部屋が、ベッドが熱い。気がつけば彼女の家は炎の中だった。火の熱で起こされた彼女は両親を探した。
「お父さん!お母さん!みんなああああ!!」
だが、父と母の姿も、見知った顔もなかった。すでに炎の中に消えていたのだ。
それでも彼女は走った。誰か他に生き残っている人がいないか。だ
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