File.2 「見えない古文書」
Z 同日 PM2:13
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の空間があった。だが上とは違い、そこには大きな祭壇らしきものがあり、中央には何かが安置されていた。しかし、懐中電灯の明かりでは、それが何であるかは分からなかった。
「相模君。どうやら蝋燭があるようだから、点けてくれるかい?」
「櫪さん…私は煙草を吸いませんよ…。」
「…そうだったね…。仕方ない。」
櫪氏はそう言うと、蝋燭に触れて何かを囁いた。すると…蝋燭に火が灯り、周囲の闇を裂いた。櫪氏はその蝋燭を持って次々に他の蝋燭へ火を移し、地下の闇を払拭させたのだった。
全体が明かるくなると、祭壇らしきものが何であるかも見てとれるようになったが…それは正しく異様と言えた。
「何だ…これ…!?」
私はそれを見て、思わずそう呟いてしまった。さっきは気付かなかったが…この中央に安置されたものは…。
「木乃伊…ですか…?」
「まぁ…そのようだね。一部白骨化してるけど。これが元凶の一つに間違いはないよ。これを隠すために、わざわざ社擬きまで作るなんてねぇ。」
櫪氏はそう言うや、祭壇中央にまで上がって木乃伊を観察し始めた。
「かなり経ってるなぁ。おや?ここに何か…。」
櫪氏は何かを見付けたらしく、木乃伊の衣服に手をやった。私も勇気を出してそこへ行くと、櫪氏は木乃伊の着ていた上着を見ていた。まぁ、その裏側なんだが。
その上着は現在あるものとは少し違っていた。とても上等なものだとは分かったが、デザインなどがかなり古めかしいのだ。その上着には刺繍で名前が縫い付けてあり、櫪氏はそれを私へと見せた。
“如月信太郎"
「如月…信太郎?」
「如月初代当主の名だ。」
私は唖然とした。この木乃伊の衣服は、如月家初代当主のもの…と言うことは、まさか…この木乃伊…。
「うん…頭を強打してるなぁ。手足も骨折してるようだし、事故死だったのかなぁ。」
櫪氏は、尚も木乃伊のあちこちを見たり触ったりしている。この人の図太さは、私も見習うべきなんだろうか…。
「事故死だったら、なぜこんな場所に?普通だったらちゃんと埋葬されてる筈では?」
「故意の事故じゃなかったらね。この木乃伊、少なくとも亡くなったのは二十代半ばから三十代前半ってとこだ。如月家の正式な記録では、初代は八十三で亡くなってる。」
「それじゃ…これは誰なんですか…?」
私が恐る恐る櫪氏へと問うと、彼はとんでもないことを口にしたのだった。
「こちらが本物の初代当主殿だ。いや…家を興す前に亡くなっていただろうけど…。」
「えっ!?」
私は目を丸くした。もし櫪氏の言葉が正しければ…現在の如月家を興した人物は偽者と言うことになる。そうだとしたら過去だけでなく、現在の如月家にも大きな影響があるはずだ。
「まぁ、こういうことだろう…。」
櫪氏は徐にそう言うと、推論を私に話してくれた
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