File.2 「見えない古文書」
Z 同日 PM2:13
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なんですか?」
「いいかい?第一節は“一つ一夜のお月様"だっただろ?それは“人の世"、つまり此方の月って意味だ。菩薩は生きている人間を救ってくれると言われてるから。」
「あ…月光菩薩ですか…。」
「そう。それで、この月光菩薩の目は入れてなかったんだ。その見えない目で見ている先には…。」
「残る謎の答えがあると?」
「そうだ。この社にも答えの一部があるはずだから、中に入るとしようか。」
「え!?あの中に入るんですか!?」
櫪氏は私の問いに答える間も無く、目の前に建つ不可思議な社へと足早に向かった。私もその後に続いたが、改めて傍で見ると、それはやはり寺に近い建物だと感じた。
私達は正面の扉を開いたが、これが不思議なほど重い。観音開きの扉の片方を、二人がかりでやっと開けられたほどだ。が…開らくにつれ、中から鼻をつくような異臭が漂ってきたのだった。
「腐臭だな。」
櫪氏は一言そう言うと、扉へ一枚の護符を貼り付けて中に入った。
「あれは…?」
私がそう問い掛けると、櫪氏は「まじないの様なもんだよ。」と言った。私もそれ以上聞きはしなかったが…櫪氏は、この件で力を出し惜しみする気はないようだと感じた。ただ…私ではそれを理解出来ないだけなのだ。
中へ入ると、そこはただ広いだけの場所だった。何があるわけでもなく、御神体やら御本尊やらといったものも皆無だ。
しかし、櫪氏は何か分かったようで、その中をスタスタと壁際まで歩いて行き、壁の一部を押したのだった。すると、その壁は音もなく開き、そこから強い異臭が放たれた。
「相模君。確か…この辺りで行方不明者がいたよね?」
「はい…まさか…!?」
「そうらしい。服装からしても間違いないだろう。これは、どうやら侵入者を排除する仕掛けらしい。落ちたところに竹槍なんて…時代を窺わせるよな…。」
それを聞き、私は背筋に悪寒を感じた。もしかすると、この建物内にはそうしたトラップが幾つも存在するのかも知れない。だが、そんな私の不安をもろともせず、櫪氏は端から罠を見破っていった。そして…その度に新たな犠牲者が見付かっていったのだった。一番古い遺体は、恐らくこの社の建てられた直後のものと思われた。
「やっと見付けた。相模君、ここから下へ降りられるよ。」
櫪氏は、どうやらそれを探していたらしい。最初から地下があることに気付いてたんだろう。発見した犠牲者の中には、これを探していた者もいたのだろう…。
櫪氏と私は、早速そこから地下へと降りた。中は暗く、私が持ってきた懐中電灯の細々とした明かりが頼りだった。
長年開かれなかったそれは、厚い埃と湿気で増えた黴などが重なり、あまり気持ちの良い場所ではなかった。あちこちには蜘蛛の巣まである有り様だ。
階段を二十段ほど降りただろうか。そこには上と同じほど
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