File.2 「見えない古文書」
Z 同日 PM2:13
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んな中を十五分程歩いただろうか、やっと正常な道へと降り立つことが出来た。私が安堵して振り返ってみると…歩いてきた道は、もう跡形もなくきえさり、再び山が視界を覆っていたのだった。
「く…櫪さん…あれって…。」
「ん?あぁ、一種の手品とでも思って。それより、そろそろ社へ着きそうだよ。」
櫪氏はそう言うと、またスタスタと歩き出したのだった…。私もそれ以上聞くのもどうかと思い、詮索することをやめた。まぁ、聞いても理解出来ないことは分かっているからな…。
さて、そこからはものの数分もせずに社へと着くことが出来た。が、それは想像していたものよりもかなり大きく、そして…変わっていた。果たして、これを社と言っても良いものかと、私はそれを見て首を傾げたのだった。
通常、社とは神を奉じる建造物だ。無論、私はそれを想像していたのだが…入り口からしておかしいのだ。ここには鳥居が無く、代わりに二体の仏像が両端に据えられていたのだ。
長い月日を風雨に晒されていた石造りの仏像は、かなり傷んではいたが、それがどんなものであるかは見てとれた。
「これ…日光・月光菩薩像ですよねぇ…。」
「そのようだね。しかしなぁ…何故こんなものが入り口にあるのか…。」
櫪氏すら、これには首を傾げた。
「これは元来、薬師如来の脇侍として造られるのが通例だ。だが…あっちはどう見たって寺とは言い難い。ここには一体、何が奉られてるんだ?」
櫪氏はそう言いながら、左側の仏像に歩み寄って観察し始めた。
「これ…日光菩薩像ですか?」
「いや、こっちは月光菩薩だ。左手を上、右手を下にしてるだろ?その逆が日光菩薩だよ。っと…あれ?これ…目を入れてないなぁ…。」
「完成してないってことですか?」
「いや…ここまでして完成させない筈はない。恐らく、何らかの理由で目を入れ無かったんだ。それじゃ、あっちはどうだ?」
櫪氏はそう言うや、今度は日光菩薩像へと歩み寄り、同じように観察し始めたのだった。
「こちらは入ってるな…。」
そう言うや、櫪氏は何やら考え込んでしまった。私は櫪氏の邪魔にならないよう辺りを見ていたが、ふと、先程の月光菩薩像に違和感を感じた。違和感とは、その顔がとある方向へと向けられているということだ。何か意図的なものを感じ、それを櫪氏へと話してみた。
「櫪さん…月光菩薩なんですが、顔の向き…おかしくないですか?」
「…そうか!」
私の問いに、櫪氏は直ぐに反応を示した。何か分かったようだが…私にはさっぱりだ…。
「何か分かったんですか?」
「ああ。相模君、あの数え唄覚えてるかい?」
「覚えてますが…何か関係が?」
「大有りだよ。ここが、あの歌詞の出発点なんだ。」
「えっ!?」
私は直ぐに歌詞を思い返したが…やはりさっぱり分からない…。
「どういうこと
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