File.2 「見えない古文書」
W 6.8.AM10:23
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何故…こんな唄が歌い継がれたのか…誰も疑問に思わなかったのが不思議だ。
「まぁ、いろんな理由があるんじゃろう。この唄がいつ頃創られ、一体何を訴えかけているかは、わしにも分からんがのぅ。」
私には、このキヌさんが普通でないように思える。さっきから当たり前の様に会話しているが、キヌさんのそれは、紛れもなく私の心を読んでいるのだ。それ故に…私はキヌさんへと問いを投げ掛けた。
「キヌさん。貴女…どちらのご出身ですか…?」
その問いに、キヌさんは最初何も答えなかった。暫く無言の後にお茶を一口啜り、それから徐に口を開いた。
「お前さん、此花の櫪って家を知っとるかい?」
問いに問い返され、私は少し戸惑った。だが、その家には心当たりがあったため、私はこう答えたのだった。
「私の友人に、その家の者と知り合いがいます。」
そう容易くある姓じゃない。恐らく…キヌさんが言った家と同じと考えて良いだろう。が、何故この姓を出したのか見当もつかない。だが、次のキヌさんの言葉に、私は今まで以上に驚かされることとなった。
「わしはな、その櫪の家から嫁いできたんじゃよ。」
櫪家…代々に渡って解呪師を生業としてきた一族。一般的な霊能力者とは違い、その力は桁が違う。私は友人の知人…と言ったが、藤崎の友人に櫪 夏希という人物がいるのだ。私も以前、藤崎の紹介で何度か顔を合わせたことがある。今は当主の座に着き、本家を守っていると聞いている。
「まさか…解呪師の…。」
「そうじゃ。まぁ、わしゃ力が弱かったからのぅ。」
そう言うと、キヌさんは可笑しげに笑った。私としては笑いようがないんだが…。だが、先程から感じていた違和感には説明がつく。櫪家の下位でも、その力は一般のそれとは比較にならない程高い能力を持つ一族なのだから、力が弱いとはいえ、私なんかとは比ぶべくもないのだ。
「相模殿。どうされるおつもりかの?あの如月家を何とかしたいんじゃろ?」
「ええ…。僕はこの町に伝わるあの数え唄に何か特別な意味があるように思うんです。ただ…それを解読するだけの資料が…。」
「では、本家に助力を乞うてみようかいのぅ。」
「は!?いや、滅相もありませんよっ!」
キヌさんの提案を私は即座に断った。しかし、キヌさんのこの提案には、二つの意味があるように思う。単に私の力になるというものと、そしてもう一つは…私の力では解決出来ない問題だと言うことだ。
「遠慮は無用じゃよ。別に対価を取るわけでなし、呼んどって損もなかろ?」
私は苦笑した。キヌさんの言い分は尤もだが、一応はプロの探偵として雇われているというのに、他人に助力を仰ぐなんて…やはり、自分のプライドが邪魔をする。
「見栄を張っても腹はふくれんよ。」
そんな私を見透かしたかのように、キヌさんは笑いながらそう言った
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