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相模英二幻想事件簿
File.2 「見えない古文書」
T 同日 PM7:45
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ことは反対の西側から聞こえてきたため、悲鳴は如月夫人か七海さんであることは想像出来た。
「何があったんです!?」
 行ってみると、七海さんの部屋の前に使用人達が数人集まっていた。皆一様に心配そうな表情を浮かべ、静かに中を覗いていた。
「相模様…。」
 私に気付いた岸野さんが集まる人達を割って、私に中の様子が確認出来る様に通してくれたため、私は直ぐに部屋の中へと入った。
「どうしたんですか?」
 私が入ると、そこには七海さんと如月夫人がベッドに座っていた。七海さんは真っ青な顔をして震えており、それを夫人が抱いて落ち着かせていたのだ。
「相模様…。七海が…窓に人影を見たと申しまして…。」
「人影…?」
 私は失礼とは思ったが、そのまま奥まで入り窓を確認した。
 先ずは鍵を確認し、それから窓を開いて上下左右を見回したが、これといって何も見付からなかった。
 それもそうだろう。ここは…二階なんだからな。足を掛けられるような場所もなければ、よじ登れるような丈夫な蔦もない。この窓から誰かが覗くなんて少々考え難いのだ。
 梯子を掛ければ覗けなくはないが…どうしたって何らかの形跡が残る筈だし、真下は花壇になっている。この短時間でそんな大きな梯子を持って移動出来るものか?それも全く音を立てずに…。
「七海さん…。一体、何を見たんですか?」
 私の考えとは裏腹に、七海さんは未だ真っ青な顔で震えているため、私は夫人とは反対の方へと回って静かに問い直した。すると、七海さんは震える唇で答えたのだった。
「あまり…よくは分かりませんでしたが…。あれは…老婆でした…。まるで…窓に張り付いている様な…。」
「老婆…ですか…。」
 この七海さんの答えに、私だけでなく、夫人も集まった使用人達も首を傾げるしかなかった。
 私は再び窓を開き、細かい部分までを見てみたが、仕掛けがあったとは考えられない。
 尤も、上は屋根で下は使用人の部屋なのだから、そんな場所に仕掛けなど出来はしないだろう。
「七海さん。このカーテンは、いつも閉めてお休みに?」
 ふと思って七海さんへと尋ねると、彼女は「いつも閉めます…。」と答えてくれた。
「如月夫人…。このカーテン、夫人が来た時には開いてましたか?」
「はい…。」
 そうなると、このカーテンは…ひとりでに開いたことになる。七海さんの勘違いと言うこともあるだろうが、習慣というものは意外と正確だ。
 あまり考えたくはないが、この事件…探偵の領分じゃないかも知れない…。
「七海さん。恐らく、今日はもう安心して大丈夫でしょう。ですが、この部屋では眠れないのでしたら、誰かに別の寝室を用意してもらった方が…」
「いえ…大丈夫です。音楽でも聴いていれば気も紛れますので…。」
 まだ顔色は良くないものの、七海さんは立ち上がっ
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