第三十八話 夏になってその八
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「苦手よ」
「暑いからですか」
「神戸だと大丈夫だけれど」
前は海、後ろは山だからそのせいで、です。
「おぢばは盆地でしょ」
「奈良県のこの辺り全体が」
「夏は熱気がこもるでしょ」
「そうですよね」
「それでね」
「奈良県の夏自体が苦手ですか」
「冬は寒いのに」
おぢばは冬はかなり寒いです、そして夏はなのです。
「どうしてこんなに暑いのかしら」
「まあそれは仕方ないですね」
「そう、おぢばにいるとね」
そうであるのならです。
「仕方ない、受け入れるしかないのよ」
「そういうことですね」
「そう、ただね」
「ただっていいますと」
「私ただ職員室に行ってただけなのに」
ちょっと先生にお聞きしたいことがあってです、授業で気になることがあって。それでもうお聞きして疑問は解決しましたけれど。
「何で一緒になるのよ、今日も」
「僕とですか」
「どうしてまた」
何でか職員室の前にこの子がいてそれでどういう訳かグラウンドの方まで歩きながら現在進行形でお話をしているのです。
「一緒に歩いてるのよ」
「これも受け入れるってことで」
「どうして?」
「お引き寄せってことで」
「全く、都合のいい解釈ね」
この娘独特のです。
「いつもいつも」
「そうですか?」
「そうよ、そもそも三年の職員室に用があるの?」
一年生の子がです。
「その時点で、じゃない」
「ちょっと受験で気になることがありまして」
「受験で?」
「天大受けるつもりですけれど」
「そのことは聞いたけれど」
グラウンドの方に向かいながら応えました。
「まだ先でしょ」
「一年ですからね」
「それでなの?」
「はい、やっぱり将来のことは考えたいんで」
「早いわね」
「大学に行って」
その天理大学にというのです。
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