巻ノ七十二 太閤乱心その十三
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「どうにもならぬ、だからな」
「このことについても」
「どうにもならない」
「そうなのですな」
「悪い方に悪い方に流れておる」
そしてだった、幸村はここでわかった。そのわかったことはというと。
「夜の星達の動きにそれが出ておった」
「そういえば」
「以前言っておられましたな」
「それも幾度か」
「星の動きが不吉だと」
「まさに」
「関白様のことであった」
無念の顔での言葉だった。
「こうなることを星達は既に見せていたのじゃ」
「そしてその星達が知らせた通り」
「関白様は腹を切らされ」
「そのうえで」
「そういうことじゃ、しかし天下はどうもな」
こうも言った幸村だった。
「大きく乱れることはない様じゃ」
「これからは」
「関白様がおられなくなっても」
「ではお拾様の下」
「天下は治まるのでしょうか」
「そこまではわからぬ、しかし一度乱れてもな」
それでもというのだ。
「すぐに収まる様じゃ」
「左様ですか」
「では、ですな」
「天下は泰平のまま」
「そのことは確かですか」
「少なくとも大きく乱れることはない」
星達はそうは知らせていないというのだ。
「幸いな、しかしまことにな」
「関白様のことは」
「無念でしたな」
「全くじゃ」
こう言うのだった、彼が腹を切ることについては幸村もまたこう思うことしきりだった。
巻ノ七十二 完
2016・9・6
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