巻ノ七十二 太閤乱心その十二
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「お命を救えず」
「我等もです」
「申し訳ありませぬ」
他の者達も言う。
「まことに」
「何と言えばいいのか」
彼等も言葉がなかった、そしてだった。
福島は大坂に戻り秀吉に全てを話した、だが。
そこで秀吉に告げられた言葉でだ、彼は唖然として言った。
「な、何と」
「何かあるか」
秀吉は血走った目で福島に問い返した。
「わしの考えに」
「ですがそれは」
「決めたことじゃ」
有無を言わさぬ言葉だった。
「すぐにじゃ」
「そうせよと」
「そうじゃ、わかったな」
「です、か」
福島は呆然としつつ言うしか出来なかった、そしてだった。
惨事はまだ続いた、それは誰もが眉を顰めるものだった。
幸村は都に戻ってその話を聞いてだ、苦い顔で言った。
「やはりな」
「このことは、ですか」
「考えられた」
「左様ですか」
「いや、関白様からじゃ」
彼自身からとだ、十勇士達に答えた。
「お話されていた」
「そうでしたか」
「では」
「殿もですか」
「このことは」
「いや、関白様から言われてもな」
秀次、彼からだ。
「まさかそこまでとは思っておった」
「殿も」
「そこまでは、ですか」
「太閤様は本来は無駄な殺生をされぬ方」
それ故に人々に慕われ天下人になれたのだ、人を無駄に殺すことはない彼の人徳を見てそれを慕ったのである。
しかしだ、それでもだった。今の秀吉は。
「だが乱れておられる」
「ですから」
「その様なご無体まで、ですか」
「されますか」
「しかも頭とお動きの冴えはそのままじゃ」
秀吉のそうしたことはというのだ。
「だからおそらく我等が伊勢から戻る頃には」
「既にですか」
「ことは済んでいる」
「そうなっていますか」
「誰も止められぬ」
止めようとしてもそれより速く動くというのだ。
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