巻ノ七十二 太閤乱心その七
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伊賀者達はすぐに伊勢に着いた、幸村はこの時用意されていた宿でじくじくたる思いで留まっていたがその彼にだ。
伊賀者達は陰からだ、こう彼に言った。
「真田殿、宜しいでしょうか」
「気付いておった」
実は彼等が宿の傍に来た時からだ、幸村は気付いていた。
「伊賀の方々か」
「はい、実は」
「拙者達にすぐに高野山に行けと」
「殿からのお願いです」
「では」
「その間は我等が身代わりになります」
変装して、というのだ。
「ですから」
「わかった、それでは」
「今すぐにですな」
「すぐに高野山に参る」
幸村は座したまま声に約束した。
「そうさせてもらう」
「有り難うございます」
「ではな」
「はい」
このやり取りの後でだった、すぐに。
幸村は消えた、そして近くにいた十勇士達もだった。即座に姿を消した。幸村達はいたがそれでもだった。
彼等は高野山に向かった、彼等だけが知っている道を駆け。そうしつつ幸村は十勇士達に対して言った。
「よいな」
「はい、これより」
「関白様をお助けする」
「何とかお命だけだ」
「そうするのですな」
「そうだ、お命だけは」
そうするというのだ、そしてだった。
彼等はひたすら歩いていく、それも駆ける勢いで。
山道であるが彼等は苦にならなかった、一路進んでいく。
飯はそうしつつ食い寝るのもだ。
僅かな間でとにかく駆けた、十勇士達は幸村にその中で問うた。
「殿、高野山ですが」
「そこに進めば」
「そのうえで」
「関白様の下へ」
「参るのですな」
「おおよその場所はわかっている」
秀次がいる場所はというのだ。
「高野山に入ればな」
「すぐに関白のところに行き」
「そしてそのうえで」
「お救いし」
「それからは」
「後はだ」
ここでだ、こう言った幸村だった。
「関白様はお匿いする」
「何処に」
「何処に」
「江戸にじゃ」
そこにというのだ。
「お連れしてな」
「そしてですか」
「そのうえで」
「後は徳川殿がどうにかして下さる」
家康、彼がというのだ。
「高野山を出てこの道を戻り」
「そしてですな」
「伊勢に戻り」
「そのうえで関白様を徳川殿の方々がですな」
「江戸に」
「うむ、お連れしてな」
そしてというのだ、そのうえで。
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