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色を無くしたこの世界で
第一章 ハジマリ
第20話 木枯らし荘の昼下がり
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……」
「河川敷? どうしてまた……」
「わかんない……」

 そんな話をワンダバと共にしていると、ふとフェイの視線の端に黄色いモノが映り込んだ。
 なんだと目を凝らしてみると、それは姿を現した。

「……? あれ……フェイ……?」
「! アステリ!」

 アステリは家の前で立ち話をしているフェイを見つけると、キョトンとした表情で自身の傍に駆け寄ってくるフェイを見詰める。

「良かったぁ……」
「? "良かった"……? …………あ」

 フェイの安堵の言葉にアステリはそう呟くと、悲しそうな申し訳無い様な声色で言葉を発した。

「ボク、また何か困らせる様な事しちゃったかな……?」

 「だとしたらごめん」と謝るアステリを見て、フェイは「気にしないで」と笑って見せた。
 その表情を見て安心したのか、アステリの表情も明るい物になる。
と。

「おぉ! 君が噂のアステリくんかっ!!」
「わっ! ちょっとワンダバ……ッ」

 ワンダバは突然大声を上げると、フェイの後ろから出て、アステリの前へと姿を見せた。
 突然現れた喋るクマを見て、さすがのアステリも目を丸くして固まってしまっている。
 そんなアステリの様子を見て、フェイは必死にワンダバを止めようとするが聞く耳持たず。
 フェイの制止の言葉も押しのけて、ワンダバは自己紹介を始めてしまう。

 いつもの事。
 目立ちたがり屋なワンダバは、自分をクマのアンドロイドだと認識していないのか……他人の反応なんてそっちのけでこうして喋りまくる。
 もちろん相手はそんな喋るクマを見て驚くか、固まるか、逃げ出すかのどれかなんだが……
 それでもワンダバは懲りずに同じ事を繰り返す。
 天馬や雷門の人達と初めて会った時と全く同じワンダバの言動に、フェイは半分呆れ気味にため息を吐き、「もう!」と大きめの声を発した。

「ワンダバっ! いつも言ってるじゃん! ボク等の時代ならともかく、タイムジャンプした先の人に急に喋りかけたりしたらダメだって!」
「なぜなのだ!」

 ワンダバの問いにフェイは「うっ」とばつの悪そうな表情をする。

「だって……ワンダバはその…………他の人から見たら……クマのぬいぐるみ、なんだから……」
「私はぬいぐるみなんかじゃない!! いつも言ってるだろ!」
「いや、そんな事は分かってるよ! けど今は――」
「プッ………ハハハ……」

 そんな言い争いをしていると、突然アステリが笑い出した。
 アステリの突然の笑い声に「どうしたのか」と二人は揃って同じ方向を向く。
 彼はよほどフェイとワンダバのコントの様な言い争いがおかしかったのか、目に涙まで溜めて笑っている。
 それはフェイが初めて見た、アステリの本気の笑顔だった。

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