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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四十二話 器と才
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ません。約束の時間には未だ五分あります」
ソファーに座りながら眼の前の青年を見た。
目の前の元帥は穏やかに微笑んでいる。はて、司令長官はこちらに悪い感情を持っているわけではない様だ。ちょっと不思議な感じがした……。私と元帥は殆ど接点が無い。唯一ともに戦ったのは第六次イゼルローン要塞攻防戦だけだ。押し寄せる反乱軍を彼が瞬時に撃退したことは今でも鮮明に覚えている。その後の彼は国内の内乱に備えるため外征に出ることは無かった。
私が捕虜になる前に宇宙艦隊副司令長官になった。平民でありながら二十歳そこそこで宇宙艦隊副司令長官に就任、貴族に生まれていれば帝国軍三長官に間違いなくなれただろう。だが平民ではこれが限界だ、惜しい事だと思ったことを覚えている。
その後イゼルローン要塞陥落後、宇宙艦隊司令長官に就任。反乱軍を打ち破り、門閥貴族を斃し、国内の改革を推し進めている。今では帝国きっての実力者でありその一挙手一投足に宇宙が反応する。
あの敗戦で全てが代わった。宇宙艦隊司令長官だったローエングラム伯は副司令長官に降格、その後非業の死を迎えた。二年前には想像も出来なかった事だがブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯を頂点とする門閥貴族も滅んだ。この二年間で帝国は全く別の国かと思うほどに変わってしまった、その中心にはヴァレンシュタイン司令長官が居る……。
「十分に休養は取れましたか、体調は如何です?」
「お陰様で体調は問題ありません」
「それは良かった」
そう言うと司令長官は笑顔を見せた。軍人らしくない穏やかな笑顔だ。どうも違和感を感じる。
「もう少し早く捕虜交換が出来れば良かったのですが、思ったよりも時間がかかってしまいました。さぞかし御苦労なされたでしょう、お詫びします」
司令長官が頭を下げた。周囲の女性下士官達がこちらを見ている!
「か、閣下、そのような事はお止め下さい。閣下が最善を尽くしてくれたことはよく分かっています。小官は無事帰って来れたのです。感謝しております」
嘘ではない。あのまま捕虜生活を続けていれば何処かで耐えられなくなって自殺していただろう。帰還できたことには本当に感謝している。
「そう言っていただけるのは有りがたいですが、捕虜の中には帰還を目前にして亡くなった方も居るようです。それを思うと……」
司令長官が視線を伏せ首を横に振っている。確かに捕虜返還前に死んだ人間も居る、しかしその全ての責を司令長官が負う事は無いだろう……。
「そのように御自身を責めるのはお止め下さい、多くの者が帰ってきた事も事実なのです」
「……そうですね、そう思うべきなのでしょうね……」
少しの間お互い無言だった。司令長官は沈んだ表情をしていたが大きく息を吐くと笑顔で話しかけてきた。
「これからですが、上級
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