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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四十二話 器と才
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たのか……。隣に座る元帥の表情からは何も読み取れない。知りたいとは思ったが問いかけるのは控えた。知って良い事なら元帥が話してくれる……。
「自由惑星同盟でクーデターが有りました」
「!」
「いや、正確にはクーデターは未遂で終わったというべきでしょうね」
元帥は正面を見ている。どうやら元帥にとっては期待外れだったようだ。

「主戦派によるものでしょうか」
私が問いかけると元帥は無言で頷いた。そして微かに笑みを浮かべた、自嘲?
「出来れば潰し合ってくれれば良かったのですけどね、いささか虫が良すぎましたか……」
やはり自嘲だ。拗ねた感じがちょっとカワイイ。

「主戦派は壊滅した、同盟軍は一枚岩になった、そういう事でしょうか」
「さあ、主戦派というのは根が深いですからね。これで終わりかどうか……。ただ現在の軍首脳部の力が強まったのは事実でしょう、手強い相手がより手強くなりそうです」

元帥は一点を見ている。何を見ているのか、いずれ起きる戦いか、或いは元帥が最も警戒している敵、ヤン・ウェンリーか……。
「フェザーンのオリベイラ弁務官、そして第九艦隊司令部の面々は自治領主、ペイワード氏が拘束したそうです。思ったよりもフェザーンと同盟の関係が良い、面白くない状況ですね」

なるほど、元帥が考えていたのはそちらか。フェザーンが同盟に協力的だとするとフェザーン方面からの侵攻作戦は結構苦労するかもしれない……。面白くないと元帥がぼやくのも分かるような気がする。

「この後の予定はどうなっています?」
「十時からシュトックハウゼン上級大将と会う事になっています。午後からは辺境星域開発の件で打ち合わせが……」

私の答えに元帥は一つ頷いた。
「シュトックハウゼン上級大将と会う前にメルカッツ副司令長官に会いたいですね。副司令長官の予定を確認してください。私の方から副司令長官室に行きます。それと十一時から各艦隊司令官を会議室に集めてください」
「分かりました」

おそらくこの件をメルカッツ提督に伝え、その後で皆に伝えるのだろう。携帯用PCを立ち上げメルカッツ提督の予定を確認する。幸いメルカッツ提督は午前中は予定が無かった、こちらは問題ない。早速連絡を入れ時間を抑える。後は会議室を抑えて艦隊司令官達に会議招集のメールを送った。

“終わりました”と言うと司令長官が頷いた。ちょうど宇宙艦隊司令部が見えてきた。時間は九時二十分、シュトックハウゼン上級大将が十時には来るから九時五十分にはメルカッツ副司令長官との会談を終わらせなければならない。



帝国暦 489年 2月 20日  オーディン  宇宙艦隊司令部  トーマ・フォン・シュトックハウゼン



宇宙艦隊司令部、此処に来るのは本当に久しぶりだ。帝国歴四百八十三年に
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