800部分:第百二十四話 争いの女神その一
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第百二十四話 争いの女神その一
争いの女神
「来たか」
「争いの女神エリスだな」
「知っている筈だがのう」
目の前にいるシオンを見てだ。そのうえでの言葉だった。
「それは」
「その通りだ。既に知っている」
こうそのエリスに対して返す。
「あの時でな」
「私は忘れてはいない」
エリスのその目に怒りの色が宿った。それは誇りを傷つけられた者の目だ。
そしてだ。その目で言うのであった。
「神である私を退けたことをだ」
「忘れてはいないか」
「貴様は人だな」
「それ以外の何者でもない」
シオンもまたエリスに返す。
「それを言っておく」
「ではだ。よいな」
「あの時の言葉も覚えている」
また言葉を返すシオンだった。
「聖域でのことだな」
「そうじゃ、そういえば貴様とはじゃ」
「あの時とは別にか」
「思い出しておるな」
シオンを見据え続けていた。そのうえでの言葉である。
「既に」
「先の聖戦か」
「貴様はあの時も教皇だった」
あの先のアテナとアーレスの聖戦のことをだ。ここでも話すのだった。それは彼等の記憶にそのまま蘇ってきているものであった。
「そうじゃったな」
「そうだった。私もだ」
「あの時はライブラの聖衣で敗れたがのう」
「今は違う」
シオンは言い切ってみせた。
「今はだ」
「貴様等自身の力だというのじゃな」
「そうだ、その力でアーレスに迫っている」
そうなっているというのだ。
「こうしてだ」
「貴様もか」
「私もまた戦士だ」
また言い切ってみせたのである。
「それ以外の何者でもない」
「教皇であってもか」
「私は戦士だ」
このことを強調して言う。何としてもだった。
「だからこそ今ここにいる」
「戦士か」
「違うというのか」
「それは言わぬ」
シオンの言葉をだ。否定しないのだった。
「何故ならじゃ。私もまた」
「争いの女神もか」
「アーレス様の戦士だ。それに」
「それに?」
「戦衣もある」
それもあるというのだった。
「私のな」
「争いの女神のものもか」
「左様、ある」
こう言うのであった。
「私のものがな」
「ではそれを着るのだな」
シオンはそれを止めようとしなかった。むしろそれを勧めるのだった。
「その間は何もしない」
「何もしないというのか」
「それは」
「そうだ、私もまたアテナの戦士」
そこにこそ誇りがあるというのである。しかと言ってみせたのである。
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