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STARDUST唐eLAMEHAZE
第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#41
FAREWELL CAUSATION〜PHANTOM BLOOD NIGTMARE FINAL〜
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 火を呑むような断腸で状況に堪えていたアラストールが遂に声を荒げた。
 誓約を違える事が却って少女を苛むかもしれないが、
最早この状況で綺麗事は言っていられない。
 ヴィルヘルミナ、願わくばジョセフ、エリザベスと合流できれば負傷の治癒も可能。
 あの男も決して責めまい、寧ろ英断だったと少女の身を憂慮する筈。
(赦せ……ッ!)
 最早返答を待つ時間すら惜しい、フレイムヘイズと王の精神を入れ換える禁儀、
“霞幻ノ法” を発動させるため胸元の神器、コキュートスが紅く光る。
「ダメッッ!!」
 弱き者が振り搾る勇気のように、
意志と無関係に双眸から流れる雫に頬を濡らしながら
少女は懸命に王の苦渋を遮った。
「“それだけは” 赦さないッ! “そんなコトしたら”
アラストールでも絶対に赦さないッッ!!」  
 フレイムヘイズに執って、使命遂行こそ至上の事、
故に己が一命を賭しても完遂出来ないなら即座の撤退、
生還こそが目的の第一義となる。
 事実数年前の彼女ならそうしていた、
“千変” “壊刃(かいじん)” そして “悪魔皇(あくまおう)
勝算の視えない相手には交戦は疎か近づきもしなかった。
 故に今回の例も同じ事、勝機薄く尚かつ置かれた状況が最悪過ぎる。
 死ねば恥も外聞もない、故に撤退は最優先事項、異論を挟む余地などない筈。
(――ッ!)
 ここまで思考して、アラストールもまた転進に厭忌を感じている己に気づいた。
 少女の気持ちが同調したのか、それとも自分でも知らない間に
心奥へ変化が生じていたのか、戦場では当然の賢明を愚者の拙劣と解し始めていた。
「私も、昔は同じように考えてた。
自分の戦略が破綻したなら、
敵なんか捨ててとっとと逃げればイイって。
もっと強くなって “いつか” 討滅出来ればイイって……!」
 苦い果実を噛み砕くように、少女は過去の自分を強烈に戒む。
「後に残される人達の事も考えず――!
罪もない人々が殺される意味も考えず――!」
 此処に至ってアラストールはシャナの想っている事を明確に認識した。
 何故このような暴挙を遂行しようとしているのか、
「使命」を違えてまで自ら死地に留まろうとしているのか。
「目の前に在る、たった一つの生命(いのち)
ソレを蔑ろにしたら、紅世の徒と変わらない。
“アノ男” と何も違わない。
自分しか、 “自分の気持ちしか” 大切じゃないなら、
そんなのは 『使命』 でもなんでもない! ただの身勝手な思い込みよッッ!!」
 血を嘔くような想いで、シャナは躰は疎か心まで傷を晒し
その痛みを受け止める。
「 “アイツ” は、絶対そんな事しないッ! 
自分が窮地に陥ったからって、
目の前の生命を見捨てるなんて事絶対にしない
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