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第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#41
FAREWELL CAUSATION〜PHANTOM BLOOD NIGTMARE FINAL〜
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らもティリエルは感銘を漏らした。
 既に恐慌からは立ち直り先陣に切り込む兄を
いつでも援護できる体勢を整えていたが、
その必要がまるでないコトに驚嘆していた。
 余りに凄まじい一方的な猛攻、下手に援護などすれば却って誤射を誘発し
優勢を阻害してしまう局面。
 もう自分は必要ない、一対一の白兵戦なら、
紅世最強の獅子 “愛染自” ソラトは誰にも負けない。
 飛び立つ雛をみつめる親鳥のように、冷たい戦風の吹く大樹の中で、
憂いを伴う充足した心情で少女は手に込める力を強めた。





   ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッッ!!
  ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッ!!!!
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッッッ!!!!!!





 俯瞰から見下ろす運河対岸の縁、石造りの壁面から伝う血が
澄んだ水面に溶けて広がっていく。
 瀕死の惨状でようやく水中から藻掻き出した少女。
 純粋無垢な躰に刻まれた眼を覆いたくなるような裂傷の数々。
血痕で別物のように染まった制服。
勇戦の過程で生まれた気高さはなくただ一方的に
甚振られた悲愴だけが胸に焼き付く。
 朽ち木のような弱々しさで路面に立てられた切っ先、
震える指先、輪郭、儚い囁きの元凶は全身に付けられた地獄の爪痕。
「あ……ぁ……う……ぅ……うぅ〜……」
 少女の見た目そのままに、加虐蹂躙の限りを尽くされた精神は
一時的な 「退行」 を引き起こしその脆さを以てボロボロに毀れていく。
「うああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――――――
―――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
“痛みは頭を冴え渡らせ力を湧きあがらせる”
等と(のたま) う白痴なる者がいるが、
痛みは痛み、それ以上でもそれ以下でもなく、児戯でもない限り、
そのような都合の良い話は戦場の何処を引っ繰り返しても転がっていない。
 少なくとも今の少女の惨況を目の当たりにすれば
そのような日和ったコトは口が裂けても吐けないだろう。
 痛みは心を殺す、魂を壊す、他者を従属させるのに、
最も直接的で原初的な手段。
(助けて欲しい……ッ! 傍にいて欲しい……ッ! 
一人じゃコイツは強過ぎる……ッ! ティリエルって女も残ってる……ッ! 
今のままじゃ絶対負ける……ッ! 二人なら……ッ!)
 禁句としている言葉の数々が恐慌状態の精神を奔流として理性の壁を突き破る。
 それを声にしなかっただけでも称えるべきであろう、現に。
「もう無理だッ! 転進せよ! 最早単独では一矢報いる事すら叶わぬッッ!!
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