黄金獅子の下に 2
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めた。
旗艦を手掛けたことはあるが、目の前にある艦はそのどれとも違っていた。どれとも似ていなかった。
ずんぐりと厳ついフォルム、箱を連ねたようなイメージで、艦橋スクリーンに投影されると宇宙空間に溶け込むような色合い───それが軍艦だと思っていた。旗艦は少しばかり外観が異なりはするが、それでもここまでではない。
大気圏内を飛行するのなら空気抵抗を考慮する必要があるが、宇宙戦艦にはその必要がない。だから作り易く、頑丈な形状のものが主だった。
それがこの旗艦はどうだろう。
直方体のブロックを宇宙空間に漂わせているような戦艦とは異なり、航空機のような巨大な三角翼を持っている。流線型のフォルムは美しく、その船体は神々しいまでに青白く輝いていた。
「こりゃまた……えらい別嬪さんだ」
「……主任、これ……」
グリムが声と手を震わせながらファイルを差し出してきた。
「どうした? まさか、これも色が違ってる、なんてわけじゃねえだろうな」
それだけはないはずだ、と訝しげに視線をやり、それから絶句した。
「……なるほど、まあ、そうだろう。いいんじゃないのか?」
ふんふんと頷いているうちに笑みが零れてくるのが自分でも不思議だと思う。
「白じゃあ見えねえから別のにしてくれ。あと地に合わせてちいっと薄目がいいな。ああ、それだけだ。位置は任せるから」
コーヒー飲んでくるわ、とベッカーが出て行ってから、グリムは艦の真下に立った。濃紺の船体なら輪郭線を白く投影すればよいが、白い船体ではただ光るだけだろう。
国章を描く位置は決められている。
座標を入力し、赤い光が輝く艦艇に当てられた。翼を持つ獅子が白い艦艇に浮かび上がる。
「おっ、いい感じじゃねえか、赤、いいよ」
ほどなくして戻ってきたベッカーがぽんとグリムの肩を叩き、ゴンドラへ乗り込んだ。
「いや、一人でいい。こっちは俺が動かすから、お前は下から確認頼む」
「わかりました」
ベッカーの補佐につくようになって、下から見ているように言われたのは初めてだった。いつもそばで彼の職人芸とも言えるノズル捌きを見ていた。ニューマン達にはずるいと言われたが、あそこまで近いとベッカーが何を見て、どこで調節のタイミングを測っているのかわからない。境目を細い噴出口で描く時だけは間近な分、微妙な加減がわかるのだが。
ベッカー一人を乗せたゴンドラが動き出す。
彼も最初から一人前だったわけではなく、グリムのように補佐でクレーン操作もしていたから造作なく位置を決めた。
マスクとゴーグルを付けると、いつものように足元に噴射して色と勢いを確かめる。
色も圧も問題はなかったが、いつもゴンドラの床に描かれている彼のイニシャルはらしくなく乱れていた。
「ちっ……素人かい、俺は」
グリムを乗せ
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