795部分:第百二十三話 サガの素顔その二
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第百二十三話 サガの素顔その二
「やがて貴様を苦しめることになるか、いや」
「いや?」
「破滅させることになるやもな」
こう言うのだった。
「出来ればその運命はこの生で断ち切っておくことだ」
そうせよというのであった。敵であるサガに対してだ。
「さもなければ万全の貴様とまた戦うこともだ」
「できはしないというのか」
「万全の貴様と闘うことを望む」
また言う彼だった。
「だからこそだ」
「どうも敵に対する言葉ではないな」
「敵だからこそ言うのだ」
「敵だからか」
こう話してであった。そのままポポスを見据えてだ。
「言うのか」
「何度も言うが万全の貴様と闘いたいのだ」
「万全ではないというのか」
「そうだ、万全ではない」
「二人いることか」
「ハーデス様との戦いの時からか」
ポポスはこう察した。
「その時からだったか」
「あの時か」
「あの時のことは思い出したか」
「いや」
言葉だけで首を横に振ってみせたのだった。
「それはまだだ」
「まだか」
「そうだ、まだだ」
また言う彼だった。
「それはない」
「そこまでは思い出せはしないか」
「流石にな」
「さもありなん。魂は生まれ変わる度に何かを忘れる」
「何かをか」
「そういうものだ」
こうサガに話すのである。
「人とはそういうものだ」
「新たな世に入る度に忘れ」
「思い出しもする。しかしか」
「そうだ、忘れていることはどうしてもある」
それがわかっているというのである。
「そういうものだ」
「だが神は違うか」
「それはない。神は常に覚えているものだ」
「そして忘れることはない」
「それが神の条件の一つだ」
サガを見ながらの言葉だった。
「ジェミニよ、貴様はそれになりたいか」
「私はそうは思わない」
「そうか」
「人でいい。神になることには何の興味もない」
「貴様はそうだな」
「そうだ」
「だが」
ここでポポスの言葉が変わった。
「もう一人の貴様はどうか。別の考えではないのか」
「どうかな、それは」
「その正義故にだ」
「力を正義とすればか」
「貴様は正義だな」
「少なくともそれを果たそうとはしている」
これがサガの返答だった。
「少なくともだ」
「そうしているか」
「そうだ、人として、アテナの見られている正義をだ」
「その際に何かを勘違いしなければいいがな」
「もう一人の私がか」
「力もまた正義であろう」
アーレスに仕える立場から認めた言葉だった。
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