俺の四畳半で美少女が眠っている件
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―――盆地の夏は、えげつない。
京都に単身赴任して初の夏。気が遠くなるような盆地のえげつない暑気を、掻き分けるようにして四畳半の借家に帰って来た俺は、玄関先で立ち尽くしていた。
俺の四畳半で、見知らぬ美少女が眠っていた。
うわ寒ってなるほど冷やされた部屋の真ん中で、年の頃14、5位と思われる美少女が熟睡している。うたた寝とか可愛らしいものじゃない。ガン寝である。きちんと畳んで押入れに入れていた俺の毛布は、無残な感じに引きずり出されていた。
抜けるように白い肌にバラ色の頬に長い睫毛に艶のある黒髪に、年頃の女の子が欲しがる要素全てが詰まった美少女だ。日向の猫のように投げ出された手足も、白樺の枝のようにほっそりと伸びている。
真新しいシューズはきちんとそろえてあるし、無造作に放り出されている黒髪も、爪も年相応に手入れされている。肌つやもいい。育ちは悪くなさそうな子だ。こんなちゃんとした感じの子が何故、俺の部屋に勝手に入り込んで寝ているのだろうか。
ふと恐ろしい事に気が付き、さぁ…と血の気が引いて指先が冷たくなっていった。
よく深夜帯ハーレムアニメとかで『一人暮らしの僕の家に美少女が転がり込んだ件!』とかやっているが、それが18歳未満ででこちらが成人の場合、俺はかなりの確率で、未成年者誘拐罪という罪状でしょっぴかれる。それが少女との合意の上だとしてもだ。
…む、そもそも合意なのかこれ!?
知らないおじさんの家でこのくつろぎっぷりは尋常じゃない。これはどう考えても誰かの家と間違えている。ここで俺が声を掛けたらこの世の終わりみたいな金切声をあげられて、弁解の余地もなく警察とかにしょっぴかれるに違いない。
…このまま美少女には話しかけず、警察に連絡するのはどうだ?
いやいやいや、それは世間一般に云う『自首』だな!もとい、『自首』と見做されるな!!
帰って来たら俺の部屋で美少女が寝てました、とかラノベのタイトルか。はーいはいオッサンの妄想オッツオッツとか云われて終わりだ。そして実は、本日の地雷は美少女に留まらない。
―――もうすぐここに、埼玉で暮らす娘が訪ねて来る。
夏休みの自由研究を兼ねた京都旅行だと、さっきLINEが入った。大した仕事はなかったので慌てて早退の申請をして、日が高いうちに帰って来た。あいつは赴任先の俺の部屋を『京都観光の拠点』だと思っていて、急に転がり込んでくること自体はしょっちゅうなのだ。かといってあいつがパパ大好きっ子というわけじゃない。残念ながら、ない。
この年頃の子たちにありがちなように、あいつの中での俺の序列はすごく低い。玄関マットのちょっと上くらいだ。多分お気に入りの毛布とかのほうが地位が高いことだろう。…いや、たまに踏まれるし玄関マットといい勝負かも知れない。だから俺が部屋に居
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