788部分:第百二十一話 放たれた矢その五
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第百二十一話 放たれた矢その五
「何があろうともだ」
「我等はオリンポスの神々と争うことはないが」
「それはわからぬぞ」
こう返したデイモスだった。
「全くだ」
「わからないというのか」
「オリンポスの神々が何も考えていないと思うのか」
「何っ!?」
「あの者達も同じなのだ」
何かと同じだとだ。言うのである。
「ポセイドン様やハーデス様とだ」
「海皇ポセイドン、そして冥皇ハーデスとか」
「そうだ、同じなのだ」
また同じなのだというのだった。
「それは覚えておくのだ」
「天帝ゼウス様もだ」
「あのゼウスもか」
「地上も全ても支配しようとしている」
言葉は続く。
「それを覚えておくことだ」
「覚えておこう。だが」
「だが。何だ」54
「その時私達はおそらく閉じ込められているだろう」
未来を見ての言葉だった。
「それはだ」
「いないというのか」
「そうだ、その時はおそらくだ」
やはり閉じ込められているというのだ。
「主に戦うのは別の少年達だ」
「覚えておくといい」
デイモスはそのアイオロスに対してまた告げた。
「私を倒した貴様だからこそ告げることだ」
「だからか」
「そうだ、だからだ」
また話すのだった。
「このこともだ」
「そのことも礼を言おう。だが」
「だが?」
「オリンポスの神々もか」
アイオロスの言葉には感慨もあった。だがそれはいい感慨ではなかった。
「地上をか」
「我等の様にそれは正面からのものではないだろう」
「正面からか」
「向かい合うものでもない」
そうしたものではないともだ。こうも言うのだった。
「それはない」
「そうか」
「ただ上から見下ろすだけだ。それはわかっておくことだ」
「神故にか」
「私も貴様等は人としてしか見ていない」
彼自身もそうだとはいうのだ。
「だが、だ。戦士として認めてはいたな」
「確かにな。その通りだった」
「先の戦いからだ。それはあったつもりだ」
「あった。それは言っておく」
「そうか、ならいい」
「戦士が相手ならば言うことはない」
アイオロスもまた彼を認めていたのだった。
「私はだ」
「そうか」
「そうだ。ではな」
「行くがいい。私の言葉を覚えてな」
「そうさせてもらう」
こう話してだった。彼等は別れアイオロスはアーレスの前に向かった。デイモスは満足した笑みを浮かべながら静かに眠ったのだった。
第百二十一話 完
2010・5・9
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