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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四十話 謀反に非ず その生き様を見よ
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た。さっきから笑っているのはこの男だけだ……。
「何故だ? 何故そこまでする? 探るだけで十分だろう……」
問いかけたホアンにネグロポンティが答えた。
「私が主戦派に接触したのは例のフェザーン回廊での同盟軍と帝国軍の遭遇戦の直後です。最初は私もそう思っていました、主戦派を探るだけだと……。しかし、地球教の事を知って考えを変えたのです」
地球教、その言葉に皆が視線を交わした。
「同盟市民として反帝国感情、主戦論が有るのは仕方ない。しかし何らかの目的を持つ勢力に利用されるような存在は許すべきではないと……」
「だからクーデターを計画したというのか」
呻くようなトリューニヒトの口調だった。そしてネグロポンティの声はどこまでも穏やかで冷静だ。
「そうです、議長。不平分子、不満分子では排除はできません。また排除しても彼らに同情が集まるようでは逆効果です。だから彼らを反逆者にする必要が有ったのです。それなら問題なく排除できます」
「……」
「私を反乱の首謀者として逮捕してください。私は愚かにも貴方に不満を持ち自らがこの国の支配者になることを望んだ。しかし貴方にクーデター計画を見破られ、説得され全てを自白した……。それによってクーデターの参加者を逮捕したと」
「そうすることで私の立場を守れと言うのだね」
「そうです。貴方は傷付いてはいけない。最高評議会議長は誰からも尊敬され仰ぎ見られる強い存在でなければいけないのです……」
諭すようなネグロポンティの口調だった。
「何故だ、何故そこまでする。私が君にそんな事をしてくれと何時言った。何故だ?」
苦悩という言葉を人が表すなら今のトリューニヒトがそれだろう。声が表情がその全てが苦しみを表している。
少しの間沈黙が有った。ネグロポンティは苦しんでいるトリューニヒトを見ている。そしてゆっくりとした口調で話し始めた。
「ずっと考えていました。貴方にとって自分は何なのだろうと……」
「……」
「私は盟友ではなかった。貴方にとっての盟友はレベロ委員長でありホアン委員長だった。私は数多くいる取り巻きの一人でしかなかった……」
「ネグロポンティ君……。君は……」
「勘違いしないでください、議長。私はその事を残念には思いましたが不満に思ったわけではないんです。私の器量は貴方の盟友になるには何かが足りなかったのでしょう」
「……」
「だから私に何が出来るかを考えました。数多くいる取り巻きの一人だから、取り換えのきく存在だから、何が出来るかを考えました。そしてクーデターを考えたんです。私にできる、いえ私だからできるクーデターを」
「ネグロポンティ君……」
何かを堪えるようにトリューニヒトが呟いた。そんなトリューニヒトをネグロポンティは辛そうに見てい
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