第一章 ハジマリ
第18話 単色世界にて
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す。
――「……必ず僕が、仕留めてみせるから」――
自信過剰でいつでも強気な彼が言いそうな……何の不思議も無いその言葉に、確かな<怒り>が感じ取れてクロトは目を閉じる。
閉じた瞼の裏に浮かぶのは、彼――カオスと初めて会った時の光景。
錆びたフェンスの感触。
空を赤く染めた夕焼けの暑さ。
見るも無残な程、黒く汚れた手首の色。
今も鮮明に思い出せる、少し昔の光景。
クロトの感じたカオスの『怒り』。
それは勝負に負けた事からの悔しさか……
はたまた、自分のプライドを傷つけられた屈辱からか……
――それとも、アノ子の……
「クロト様」
不意に聞こえた声に、クロトは瞼を開き顔を上げる。
声のした方を見ると、空中に展開したモニターに黒い獣の様な顔を持った一人のイレギュラーが映っていた。
「『スキア』……か……。……どうしたんだい……?」
影の様に黒い体。
不気味に見開かれた単眼。
色と顔の無い『通常』とも、両方ある『特殊』とも違う。
この世界でも珍しいその異様な姿を持ったイレギュラーは、クロトの言葉にニコッと笑うと、口を開いた。
「カオス様……どうやらアチラの世界で酷い目に遭っちゃったみたいですねぇ……」
「お気の毒です」と、髪を弄りながらスキアは同情の言葉を投げかける。
その表情は並べた言葉とは裏腹に、楽しい事でもあった様な無邪気な笑顔だ。
「お気の毒……ね。私には、そのセリフがどうも嘘臭く感じるんだけど……」
「あれ、そうですか? おかしいですね。私は、素直な気持ちを言っただけなんですけど」
「へぇ……」
そう笑顔で話すスキアに、クロトはからかう様な笑みを浮かべると玉座の肘掛けに腕をかけ頬杖を突く。
そんな彼の様子を見てスキアは一つ息を吐きだすと、先程とは違う。少し低めの真面目そうな口調で話を始めた。
「それより……これからどうするんですか? 例の裏切りさんの事」
カオスは顔も色も持ち、尚且つ色の存在する【色彩の世界】でも自由に行動出来る、特別な存在だった。
しかしそんな彼も、裏切り者――『アステリ』を連れ戻す為の戦いで大きく体力を消耗し、今はこの塔から離れられない状況。
こうなってしまえば、次にクロト達がアステリと接触出来るのは『カオスが完全に回復する』か『アステリがモノクロ世界に戻ってくる』まで待つしか無いのだ。
カオスは大分体力を消耗してしまっている……回復にはまだ時間を有するだろう。
無論だが、クロトの理想を壊す為、態々逃げ出した様な存在が自らの意志で戻ってくる様な事は無い。
もしあるとすれば
それは、クロトの理想を壊す為の仲間を集め、戦いの準備を十分にした時だ。
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