第一章 ハジマリ
第18話 単色世界にて
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試合で……負けた事も。
一連の話を、クロトはただ黙って聞いていた。
賛成も否定もせず、相槌すら打たず、ただずっと黙り込んだまま。
それが余計に、カオスの恐怖心を掻き立てた。
カオスの話が終わると、クロトは少しばかり何かを考え込んだ後、やっとこさ口を開いた。
「なるほど……とりあえず、キミの働きは分かった」
クロトの言葉は相変わらず、鋭い刃物の様にカオスの胸に突き刺さっては恐怖を掻き立てた。
四代親衛隊【モノクローム】。
自らを生み出してくれた親であり主でもあるクロトの望みならば、自分達は何であろうとソレを聞き入れ、叶えなければいけない。
「キミは、私の言った『逃げたアノ子を連れ戻せ』と言う命令を果たす為に色彩の世界にまで行って、結局負けて帰ってきたんだね」
クロトから伝えられた『逃走した裏切り者を連れ戻す』と言う命令。
ソレを果たす事の出来なかった自分に待っているのは――――
「カオス。顔をあげなさい」
「! はい……ッ」
恐る恐る下げていた頭を上げ、クロトの方を見る。
と、不思議な事に、クロトは自分がこの部屋に入ってきた時と同じ様な微笑みを浮かべ、カオスを見つめていた。
「よく頑張ってくれたね、カオス。ありがとう」
「え……」
予想外の言葉に、カオスは自分の耳を疑った。
だってそうだろう。自分は失態を犯した……
それなのに「ありがとう」なんて……
クロトの言葉に動揺するカオスに、彼はそのまま穏やかな口調で話し続ける。
「今回キミが勝負に負けてしまったのは、キミならアチラの世界でも大丈夫だと思いすぎていた私の責任だ。キミには、苦しい思いをさせてしまっただろう……すまないね」
「クロト、様…………」
「今日はもう疲れただろう。ゆっくり自分の部屋で休むと良い」
クロトの微笑みと優しい言葉に、自然と恐怖心も薄れたカオスは普段の様に笑うと、生意気そうな口調で「分かりました」とだけ言い放ち、出口の方へと足を伸ばす……
「あ、そうです」
扉の前まで歩いた所で、突然何かを思い出したのか。カオスが呟いた。
「どうしたんだい」と尋ねるクロトの方へと向きを変えると、彼は少しだけ強い口調で言葉を発する。
「……今回は取り逃しちゃったけど……あの人間達は、じきにこの世界にもやってくる。その時は……必ず僕が、仕留めてみせるから」
そう告げるカオスの瞳が
包帯で隠れているはずの右目が。
ほんの一瞬だけ、赤く光った様に見えた。
「あぁ、期待してるよ」
穏やかな笑みを浮かべながら、クロトは去っていくカオスの後ろ姿を見送る。
無機質な扉の開閉音。
一人、取り残された静かな部屋でクロトは先程の彼の言葉を思い出
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