精神の奥底
64 食い違い
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ぐさま端末を開いて、手掛かりを探そうとする。
「……ん?」
しかし自分への発信履歴以外、不自然なくらい何も残されていない。
正確には誰かが使った形跡が残されていない。
声色を変える為の変声アプリすら見つからないところからすれば、アナログの変声機かもしくは裏声を使ったのだろうが、それにしても不自然だ。
設定がほとんど初期設定のままで、工場出荷時に張られている注意書き付きのフィルムすらそのまま、まるで買ったばかりだ。
そんな時、彩斗は1つの可能性に気づく。
非常階段からフロアに戻り、落下防止の手すりに体重をかけて下を見下ろす。
このショッピングモールの地下鉄との連絡口の付近にその答えはあった。
「……プリペイドフォンか」
空港から直通の地下鉄が走っているこのモールは海外の人々が多く訪れる。
そこでニホンでの滞在期間中の連絡用の端末が売られていたのだった。
この機種もイチオシ機種として、広告が大きく出されている。
端末を購入する場合は身分証明書が必要となるが、恐らく彼らはそんな証拠を残すようなヘマはしない。
プライムタウンにいるような浮浪者にでも金を握らせればいくらでも手に入るのだ。
「…くそっ!」
彩斗は先程、自分を助けてくれたはずの手すりを殴った。
その浮浪者を突き止めて吐かせようとすれば、彼らは先回りして口封じするのは目に見えている。
このショッピングモールの防犯カメラの映像も、彼らならカメラの位置を警戒し、死角を選んでいるはず。
仮に映っていたとしても、インターネットシステムがダウンしている今の状況では外部から侵入することはできない。
普及までは最低でも10日から2週間近く掛かる可能性もあり、大概の防犯カメラ映像はその団体にもよるが1週間程度で削除されてしまうことも多い。
酷い場合は毎日削除されているようなところもある。
追跡の手段は残されていなかった。
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