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流星のロックマン STARDUST BEGINS
精神の奥底
64 食い違い
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からないのか?我々はお前の素質を開花させたに過ぎない』
「人を平気で傷つけられることが僕の素質…本性だって言いたいのか?」
『いや。我々が言いたいのは、お前は自分の心を、意思と身体を切り離して動かすことができるということだ』
「……僕はロボットじゃない。僕は…!」
『現にお前は暴力を嫌いながら、目的を遂行する為ならば、非情なまでの暴力を相手に奮っている』
「……」
『お前が抱く目的は常に正しい。そして、いくら自分の良心とは相反することであっても、正しい方へ進む“本能”を持っている』

彩斗は電話を切りたかった。
確かに自分は他人に暴力を奮うことで自分の心を痛め続けていた。
しかし同時にそれでしか障害を乗り越えられないし、目的を達成できないということも分かっていた。
傍から見れば、彩斗の行いは正しい。
犯罪組織に苦しめられる人、これから苦しめられる人を救っている。
そして心ではもう戦いたくないのに、Valkyrieとディーラーは潰さなければならない、それが正しいと理解できてしまうのだ。

『だからこそお前は心でいくら拒もうと我々の指示通りに動く。それが正しいことはお前が一番良く分かっているはずだ』
「……僕なんかがそんなできた人間なものか」
『クックックッ……そう自分を過小評価するな。お前は我々の想像以上だ。その証拠に不完全ではあったが自力で“ファイナライズ”に到達してみせた』
「“ファイナライズ”……」

もう背筋に悪寒が走ったどころではない。
次々と自分のベールが剥がされていく度に全身を走る血管に流氷でも詰まったのではないかと疑う程だ。
その単語には聞き覚えがあった。
プライムタウンでValkyrieの倉庫に突入した夜、自分の記憶が曖昧になった瞬間に聞こえた単語だ。
その瞬間、今まで感じたことのない程の憎悪が湧き上がり、頭の中の理性が吹き飛んだ。
周囲を取り囲み、自分の目的を妨害する敵を排除し、プライムタウンの住民も巻き添えになると知りながら、ナイトメア・テイピアに向かって渾身の一撃を放った。
暴走してしまったとばかり感じていたし、傍から見ればその行動は完全に獲物を狙い暴れ狂う野生動物のそれだっただろう。
だがプライムタウンにいる人間など生きていても百害あって一利無しであって、自分の目的の方が正しく、その為に死んでしまっても構わないと何処かで判断してしまったのだ。
間違いなく目的の為に動く明白な意思が存在していた。
あの感覚がただただ恐ろしく、自分の心が何処にあるのか分からなくなっていく。

『あの力を完全にモノにできれば、Valkyrieはおろかディーラーも容易に潰せる』
「あんな力、モノにできるわけない」
『できると言ったら?』
「……もういい…!」

彩斗はようやく終話ボタンを押
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