精神の奥底
64 食い違い
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同時刻。
デンサンシティ有数の繁華街である錦町もハロウィンムードに包まれていた。
春には花見の名所として多くの人々で賑わうティンセル公園には炎天下ながら仮装した人々が集まっている。
デンサンシティの象徴とも言えるデンサンタワーも比較的近く、その経済効果の恩恵を受けてここ数年の間で更なる発展を遂げた。
同時に海外からの客足が増えたことで、ニホンのイメージを落とす可能性があるぼったくりの飲み屋や悪質な風俗店は条例により次々と店じまいし、万人に優しい町となった。
しかし人の悪意まで消えることは無い。
一見、消え去ったように見えたとしても、他の場所に一時的に移っただけで、隙あらば再び町を飲み込もうと虎視眈々とそのチャンスを伺っていた。
「……やっぱり…理屈だけなら十分に可能だ」
そんな獣たちが裏で爪を研ぐ町の一角、錦町を代表するショッピングモールで彩斗は裏でガラス張りの天井からデンサンタワーを見上げた。
ちょうど最上階の書店で数冊の本を購入して、出てきたばかりのことだ。
電気街で感じた嫌な予感がいよいよ現実味を帯び始めていた。
最初は電気街の家電量販店の書籍のコーナーで買いそびれた本を探すつもりだった。
しかし気づけば自然と別のコーナーに赴き、この本を購入していた。
何か釈然としない感覚が拭いきれなかったのだろう。
自分でも完全に無意識だった。
「……考え過ぎ?メリー?」
彩斗はいつもの習慣でトランサーを開こうとするが、メリーとアイリスとは別行動を取っている。
今頃はアクセサリーや化粧品屋でも2人で見ているだろう。
シーマスターで時間を確認する。
機械式ならではのスムーズな動きの秒針が時間を刻み、約束の時間のちょうど30分前を指す。
2人との合流し、フードコートで待ち合わせるにはまだ早い。
手すりに身体を預け、吹き抜けになっているショッピングモール全体を眺めた。
ここにやってきたのは、実は幼少期に1度だった。
何があったのかは覚えていないが泣いて落ち込んでいた自分をハートレスがここへ連れてきて、ミントチョコのアイスクリームを買ってくれたのを覚えている。
まだオープンしたばかりで多くの客を集める為にその時の流行の店が多数出店しており、事実かなりの賑わいを見せていたが、流行の変化とともに時代に左右されないスタイルの店へと入れ替わり、彩斗の記憶とは大分違う。
しかし彩斗のすぐ後ろにはその時のアイスクリーム屋はまだ残っていた。
洋服の店からアクセサリーの店、眼鏡やコーヒーショップ、映画館、レコードショップ、ニホンのお土産店など様々など展開がされている。
特にスイーツ関係に関しては、このショッピングモール内での食べ歩きガイドまで発売される程に有名店が軒を連ねていた。
「……」
最上階から下のフロ
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