巻ノ七十二 太閤乱心その二
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「そして伊勢参りを楽しまれて来いとです」
「左様か」
「すぐに」
「わかった」
太閤直々の命だ、それでだった。
彼はだ、こう使者に答えた。
「では伊勢に参ろう」
「それでは」
こうしてだった、秀吉の命に従って伊勢に行くことにした。だがこのことについてだ。
使者が帰った後でだった、幸村は十勇士達を呼び問うた。
「どう思うか」
「はい、おそらくです」
「太閤様は読まれています」
「殿が関白様を護っておられることを」
「それ故にです」
「伊勢に行く様に言われたのでしょう」
「そしてそのうえで」
十勇士達も言う。
「我等にもです」
「伊勢に行く様に言われたのでしょう」
「そうじゃな」
苦い顔でだ、幸村は応えた。
そしてだ、こう十勇士達に言った。
「拙者も御主達もな」
「これで関白様をお護りする者がいなくなった」
「治部殿も刑部殿も大坂におられません」
「そして都にも」
「これで」
「まずいのう」
幸村は袖の中で腕を組んで言った。
「我等がいない間にな」
「はい、そして」
「そのうえで、ですな」
「手を打ってくる」
「そうしてこられますな」
「伊賀者も江戸に行く様に言われている」
彼等についてもというのだ。
「だから護りはな」
「もうない」
「誰も関白様をお護り出来ぬ」
「そうした状況ですな」
「流石は太閤様じゃ」
幸村は感嘆と共に述べた。
「瞬く間に全ての手を打たれた」
「間違いなくです」
筧は強張った顔で述べた。
「太閤様は関白様を」
「そうじゃな、刺客か」
望月はそれではないかと見た。
「それを送られるか」
「それはあるのう」
由利も言う。
「最早関白様をお護り出来る者はおられぬ」
「太閤様をお止め出来る者は」
穴山は真剣に探していた、彼の頭の知識の中で。
「もう北政所様しかおられぬが」
「ではあの方に文をお送りすべきか」
清海はこう言った。
「ここは」
「ではすぐに殿にお書きしてもらうか」
海野は幸村を見つつこう言った。
「ここは」
「それがいいかもな」
猿飛も幸村を見ている。
「ここは」
「ことは一刻を争いまする」
伊佐も緊張した面持ちで語る。
「殿にすぐにお書き頂き」
「急がなくては」
霧隠もかなり緊張している、とはいっても必死に焦りを抑えている。
「ここは」
「では殿」
最後に根津が幸村に言った。
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