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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十八話 式典の陰で
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自分達を、創生者である自分達を見捨ててフェザーンだけが繁栄しようとするワレンコフの考えは受け容れる事の出来ないものだったのではないだろうか。
恐怖もあったかもしれない。おそらくワレンコフにとって地球は邪魔以外の何物でもなかったはずだ。和平斡旋後、或いは斡旋中かもしれないが何処かで地球の陰謀を帝国に伝え、その陰謀を粉砕したに違いない。地球もそれは分かっていただろう。
「ペイワードがこの時期に自治領主になったのも単に己個人の野心からではないようだ。彼はワレンコフの遺志を継いで同盟と帝国の和平を成し遂げたい、それがフェザーンの中立維持と繁栄に繋がると考えている」
「なるほど、議長がペイワードに和平交渉を委ねたのはそれが有ったからですか」
ボロディン本部長の言葉にトリューニヒト議長が頷いた。皆、何処と無く感慨深げな表情をしている。ワレンコフを、そしてその遺志を継ごうとしているペイワードの事を考えているのかもしれない。人は死ぬ事は有っても人の遺志は受け継がれるという事か……。
「状況証拠では有りますが地球教の陰謀が存在する可能性は高まりましたな」
「しかし物的な証拠は未だ何も無い」
「ヤン提督が帝国にそれを依頼しましたが、こちらでもフェザーンの長老会議を調べては如何です? このままでは埒が明かない」
ウランフ提督とボロディン本部長の会話に皆が視線を交わした。ウランフ提督が苛立つのも分かる。例のフェザーン成立に協力した人間だがサンフォード前議長以外の協力者も判明した。しかし地球との繋がりは見えなかった。地球は巧妙に姿を隠している。決め手が見えないのだ。
ややあってレベロ委員長が口を開いた。
「それは止めたほうが良いだろう。彼らを調べればこちらが地球の存在に気付いたと向こうに教える事になる。我々は地球について殆ど知らない。その我々が唯一持っているアドバンテージがこちらが地球の存在に気付いた事を向こうは知らないという事だ。その優位を捨てる事は無い」
唯一のアドバンテージ、その言葉にウランフ提督が顔を顰めた。頼りないアドバンテージだと思ったのだろう。しかしそれでもアドバンテージである事には違いない。レベロ委員長を応援しようというのだろう、その後をトリューニヒト議長が繋いだ。
「レベロの言う通りだ。現時点で長老会議を調べれば地球がどう反応するか分からない。……場合によってはフェザーンで暴動を起すかもしれん。そうなればフェザーン占領を唱える人間がまた力をつけるだろう。今は控えるべきだ」
「では、何時彼らを調べるのです。このままずっと放置しておくのですか?」
何処か納得がいかないといった口調のウランフ提督に対し、トリューニヒト議長がゆっくりとした口調で話した。
「帝国から証拠が提示された時、それを同盟市民に提示した時
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