第46話『白鬼』
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えに、開いた口が塞がらない。
今アイツは“姉”といっただろうか、ユヅキのことを。
「あ、そうだ、君の言うユヅキという娘は白髪かい?」
「そう…だが…」
「だったら間違いないな。ボクの姉のユヅキだ」
あり得ない、とは言い切れない。彼の容姿との共通点も多いからだ。
そもそも、ユヅキの両親については一度訊いたが、兄弟については触れてなかった。
隠したつもりはないだろうが、これは予想外の展開である。
「…でも、弟が…ユヅキに何の用なんだ? 捜すにしても、たくさんのウォルエナ連れて襲撃は大掛かり過ぎるだろ…?」
「いやいや、この広さだ。あれくらいの数は当然。命令は『ボクの姉以外を喰らえ』だから、人がドンドン減ってすぐに見つかる予定だったんだけど・・・」
「…おい、待てよ。それもお前の命令だった…のか?」
「あぁ」
王都を襲撃する。てっきり、命令はそれだけだと思っていたのだが、まさか殺戮命令まで出していたとは。
・・・ユヅキ以外を殺すということは、ユヅキのみを王都に残すこと。もしかしなくても、あいつの目的はユヅキを見つけることだろう。
とすると、王都の人々はそんなことのために、今も逃げ回っているというのか? 喰われた人だっているのに……。
・・・何にせよ、皆殺しをしようって奴にユヅキは渡さない。あいつは・・・敵だ。
「よーくわかった…。つまり俺は、ここでへばってちゃ…いけない訳だ」
口元の血を拭いながら、晴登は立ち上がる。傷の痛みにはもう慣れた。まだ体力は戻ってきていないが、時間が惜しい。今は付け焼き刃で闘うしかないだろう。
ユヅキは救わなきゃいけないし、あいつは倒さなきゃならない。やることが多すぎてぶっ倒れそうだ。
「へぇ、まだ立てたのか」
「お前を野放しにはできねぇよ…」
自分がやる必要がある訳ではない。それこそアランヒルデやらに任せれば、この場を上手く切り抜けられるだろう。
でも、今は晴登しかいない。晴登しか、あいつを止められないのだ。あいつを止めれば、きっと全部が終わるはず。だから、
「ユヅキはお前には渡さねぇ。俺がここで、片付けてやる!!」
再び拳を握り、晴登は高らかに叫んだ。
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