第46話『白鬼』
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
行方向に、先端が血に塗れた1本の氷柱が落ちているのが見えた。
「氷…? ユヅキ…か…?」
その氷を見て、図らずもユヅキの姿が思い起こされる。が、ユヅキがこんなことをするとは思えない。
犯人は、ユヅキとは違う、氷の魔法使いだ。
「誰だ…?!」
声を絞り出しながら、後ろを振り向く。
──するとそこには、肩にかかるくらいの銀髪をした、少年が立っていた。
「おや? まだ生きているのか。狙いが甘かったかな」
まだ声変わりのしていない、高い声が耳に入る。だがそれも彼の身長を鑑みれば、妥当といえよう。恐らく晴登よりは歳下である。
小学生ぐらいとあってか、顔の造りに可愛げがある。蒼い眼に白い肌という点を合わせると、もはや西洋の人形が擬人化したのではないかと疑うほどだ。
「誰だ、お前は…?」
「おいおい、無理に喋ると傷が痛むだろ? 大人しくしてた方がいいと思うよ」
だが、彼の大人びている言い方や嘲笑に、その評価は崩れ去っていく。というか、むしろ「いけ好かない」という評価を贈りたいくらい。
それだけ『嫌な奴オーラ』を出している彼だが、自分を傷つけた犯人は彼で間違いなさそうだ。
とすると、人を傷つけておいて、なぜここまでのうのうとしていられるのか。そこは疑問でならない。
それにしても、なぜ彼はこの地獄にまだ身を置いているのだろうか。彼だって、逃げなきゃいけない状況には変わりないはずなのに・・・
「でも、細かい…ことはいい。悪いが、邪魔…しないでくれるか? 行かなきゃ…いけないんだ」
「へぇ。避難する訳でもないのに?」
「っ…」
何とか関わり合いを避けようとしてみるも、どうにも逃がしてくれなそうな雰囲気。
かといって強行突破しようにも、傷のせいで上手く身体を動かせない。それに息を整える時間も要る。
晴登は寝転がったままはマズいと思い、とりあえず座る体勢に移行しようとした、その刹那、
「まぁいいよ。どうせ君はここで死ぬんだし。あぁ残念だね」
「は…? 何言って・・・」
晴登はそこで言動を止める。否、止めるしかなかった。
──頬に冷たい刺激と温かい液体が流れるのを感じる。そしてそれは、かすり傷の様にヒリヒリと痛みを伴い始めた。
「何の…つもりだ?」
「強さを誇示してるのさ。獲物が抵抗しないようにね」
「何で、俺を狙う…?」
「別に標的は君と決まっている訳じゃないよ。けど、君みたいな奴は標的だ」
「何言ってるのかわかんねぇよ…」
晴登は未だに痛みの信号を送り続ける脳で、必死に思考を巡らしてみる。
まず、奴の正体。怪しい、というのはもっともだが、どうも危険な感じ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ